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コンビニでお酒
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「うーん…何にしようかなぁ…」
「何がです?」
古谷先生は日本酒売り場でお酒を選んでいた。
「『淡桜』にしようか『黄龍』にしようか……明日は朝会議があるからあまり呑めないし…」
古谷先生はあまりお酒は強くないけどお酒が好き。ストレス解消とかの為にではなくて味や風味が好きと言っていた。
特に日本酒を好んでいて、日本酒の原料である麹・米の生むまろやかな口当たりや香りがいいらしい。
でも、日本酒のほとんどはアルコール度数が高いから酔いやすい古谷先生はあまり呑めない…と嘆いてた。
「『淡桜』はスッキリ香りがいいし…『黄龍』は呑み口があっさりしてるからいいんだよな――…どっちにしようて」
頭を抱えて悩んでいる。
コンビニでこんなお酒に真剣に悩んでる人いないよね。店員さんびっくりしてるし。
それだけお酒の愛がすごいんだよね。
好きなものに真剣に悩んで考えるってすごいと思う。僕はあっさり選んじゃうから。前にそれを話したら逆にすごいと言われた。俺、優柔不断だからすぐにこれと選べる判断力っていいと思うって。
そっか。裏を返せばそうなんだって。
僕は悩まずすぐに選ぶことをあまり深く考えて選んでなくて嫌だなって思ってたのに。
人のいいとこも悪いところも裏表がある。
いいところは悪いところがあって。
悪いところにはいいところがあって。
僕の嫌いだった自分の性格や行動はいいところがあるよって古谷先生が言ってくれたとき、嫌いな自分の部分が少し好きになって。
周りから見たら、自分の嫌なところがいいこともある。
だから、自分の全てを否定しないでって教えてくれたのは古谷先生だった。
人によっては、真剣に悩んで考える人を遅いとか言うかもしれないけど、僕からしたらすごいって本当に思うんだ。
僕がじっとその姿を見てると、古谷先生は気づいて申し訳なさそうな顔して謝った。誤解させたと思った。
「あ…グズグズしてすみません」
「いえ!ゆっくり考えてください。ごめんなさい、早く選べよってわけじゃなくて。真剣に選んでるなって」
「あ、それ前に言ってたやつですか?」
「そうです。真剣に悩むってすごいって…だからゆっくり選んでください」
「ふふ、ありがとうございます」
「あ…そうだ、両方買って少し飲んだらどうです?あまりは僕が飲みますから」
「はっ!そっか。そうですね!」
妙案だ!と笑ってカゴに2つを入れた。
少し考えれば浮かぶけど真面目に考えてたから浮かばなかったんだよね。少し天然なところも好きで。
「そうだ、ここの土地の水って日本名水百選に入ってるんですよ」
「えっと…この土地の山から汲み取ってる水ですか?」
「そうです。ウーパールーパーたちの水槽の水に使ってるし、まろかや味わいでおいしいんです。…古谷先生にもいいことがあるんです」
「…?」
「その水で作られた日本酒があるんですよ。もちろんここの土地でしか売ってないんです」
「えー!?本当ですかぁっ!うわーどんなやつなんだろう!呑んでみたいな」
ぱぁっと目を輝かせて笑う。
つられて僕も笑った。
「そう言うと思って前に買っといたんです。帰ったらそれも呑みましょうね」
「もちろんですよ!」
「店主さんが熱燗にして呑むと香りが深くなってさらに美味しくなるって言ってたんですよ」
「熱燗ですかぁ。良いですね!寒くなってきたし、早く呑みたいなぁ」
「楽しみは帰ってからですよ」
「はは。そうですね!……あ」
ふと立ち止まった古谷先生に僕も歩みを止める。
「…どうしました?」
「空見てください」
空を見上げる彼に合わせて夜空を見る。
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