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食い気味で質問をしていた満輝だったが、遼哉が一番大事なことを言い忘れていたと切り出して、次に紡がれた言葉に目を見開いた。
「俺の恋人、男なんだわ」
あまりの衝撃に開いた口が塞がらないとはこのことかと満輝は思い、鳩が豆鉄砲をくらったような顔とはこのことかと遼哉は思った。そうなるのも無理はないなと、ここまで言わなくてもよかったかと遼哉は後悔する。
「…男同士で恋人って、すごいね」
「まぁ普通じゃないからな。けど、俺はそのくらいの覚悟があるし、男同士だからってのを理由に諦められるようなものでもない」
「そう、だよね…うん、僕もそう思う!」
机に視線を一度落とした満輝は、今の遼哉の言葉に何かを決意したように顔を上げた。兄が自分と同じ舞台で恋愛をしているのだと知って、少し話しやすくなった。
「お兄ちゃん。実はね…僕の好きな人も、男の人なんだ」
「そうだったのか。で、お前は男同士だからって悩んでんのか?」
「ううん、違う。お兄ちゃんと一緒で男同士だから何だって感じで、そこは全然悩みもしなかったよ」
「じゃあ、何に悩んでる?」
兄の率直な問いに、満輝は言葉を止めて唾を飲みこむ。剛平から別れを告げられたあの日から2週間が経とうとしているのに、満輝にしては珍しくうじうじ悩んでいたのは、兄が絡んでいたからだった。
「あのね、お兄ちゃん」
「なんだ?」
大きく息を吸い込んで、吐き出す準備をする。この後、剛平と兄との間で何があったのかを聞き出すのはとても怖いが、これをクリアしなければ何も変わらないのだと、満輝は腹を決めた。
「……碓氷剛平さんって人、知ってる?剛平さんと、何があったの?」
「碓氷剛平?」
遼哉の答えを聞くのが怖くて勇気を振り絞って聞いた質問に、当の遼哉は素っ頓狂な声で剛平の名前を聞き返した。表情を見れば、誰だそれと明らかに書いてある。
「え?」
「え?はこっちだっつーの。深刻そうな顔で何言われんのかと思ったら、聞いたこともない名前出されて意味分かんねーんだけど」
想像もしていなかった兄の言葉に、満輝自身も何が何だか分からないという顔をした。お互い、顔にも頭にもハテナマークをたくさんつけて、しばらく見つめ合うという不思議な空間が出来ていた。
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