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辺りの音がすべて持ち去られたように静かな部屋。満輝は、剛平と遼哉が知り合いじゃないならどうして剛平は兄の名前を知りたがったのか、全く見当もつかなかった。
「…本当に、知らないの?」
「知らない。とりあえず、何があったのか全部話せ」
遼哉に嘘を吐いているような気配はない。満輝は兄に言われた通り、剛平との間であった出来事をすべて洗いざらい話した。
最後の夜に別れの言葉を告げられてから、剛平に何度も連絡をしたり公園で待ってみたりしたが会えず、遼哉に聞けば何か分かるかもしれないと思った今なのだと、満輝は言った。
遼哉は自分に心当たりのない人間が自分の名前を知りたがり、その後、弟とはもう会わないと言ったことに首を傾げた。剛平の容姿や特徴を聞いても、思い当たる人物はいない。
「絶対に知り合いではねーんだよな。医大生4年で眼鏡で落ち着いたやつだろ?まず4つ年下の人間に知り合いはいねーし、医大生とか頭のいい連中と接点なんかねーし」
「そうなんだ…」
「そいつの写真とかねーの?」
写真というワードで、満輝はびっくりドンキーで撮ったツーショット写真を思い出した。ただ、その写真の中での2人の距離は近いし、自分の恋している顔を兄に見られるのは恥ずかしかった。
「あ、あるにはあるけど」
「それ見せろよ」
「うぅ~…恥ずかしい」
写真ごときで恥ずかしがるなんて、弟にも羞恥心なんてあったんだなと遼哉は内心失礼なことを思った。
「お兄ちゃんは恋人さんとの写真、ないの?」
「あ?あるけど」
「じゃあ!お兄ちゃんのも見せてよ」
「何で俺まで見せなきゃなんねーんだよ」
「いいじゃん!同時に見せ合いっこしよ!」
「…ったく、仕方ねーな」
あからさまに嫌そうな顔をした遼哉も携帯のアルバムを開く。自分の恋人は写真をひどく嫌っていたが、1枚だけツーショットで撮ったものがある。遼哉が酒を飲んで、少しほろ酔い気分の時に撮ったものだった。
「せーのっで見せようね!」
「はいはい」
「じゃあ行くよ!せーのっ!」
どうして写真を見せるだけなのに大袈裟な振りが必要なのかと、遼哉はため息を吐いたが言われた通り、自分の携帯を満輝の顔の前に、満輝は遼哉の顔の前に差し出した。
画面の中にいたのは。
「…………え?」
兄の、恋人は。
弟の、好きな人は。
自分の、好きな人と。
自分の、恋人と。
全く同じ顔を、していた。
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