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ここに来るまでの間、最初に何から話せばいいのかずっと考えていた。2人を傷付けないような話し方はないかと考えたが、そんなことは無理だと気付き、ならば単刀直入に2人が1番知りたいであろうことから話すことにした。
「最初にはっきり言っておきます」
自分で思っていたよりも緊張ではらんだ声が出た。俺の緊張が伝わったのか、目の前に座る2人の表情も強張る。
「俺、白波瀬凪と碓氷剛平は、同一人物です」
これは紛れもない事実だった。しかし、事実であり真実ではなかった。
「俺たちは同じ体の中にいる別々の人格、つまり多重人格者。そして2人とも……主人格ではありません」
この体は、俺たちのものではない。俺たちは主人格が辛い過去を忘れて、心の時間を止めたことによって生まれた人格だった。
「嘘……」
「君が、狐塚さんの弟の狐塚満輝くんだよね?この顔と満輝くんは初めましてじゃないけど、俺にとっては初めましてなんだ。俺の名前は白波瀬凪。剛平くんとは全くの別人だよ」
唖然とした表情で視線をテーブルに落としている狐塚さんと、口元に両手を当てて泣くのを堪えようとしている満輝くん。2人の反応は正反対だったが、ショックを受けていることに違いはなかった。
「主人格は別にいて、彼が目覚めるのは平日の昼間なんだけど夕方には眠ってしまう。そして平日の夜に目覚めるのが剛平くん。週末の土日に目覚めるのが、俺なんだ」
1つの体の中にいる3つの人格。同じ体を使って、俺たちは全く違う雰囲気と性格のままここまで生きてきた。
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