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第15話
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王様は馬に乗って2日間、睡眠も食事も軽い休憩でさえ摂らずに走り続けました。途中、馬が疲れて走れなくなると宿で新しい馬を借りて走り続けました。途中、並走する大臣がリタイアしても後から来るように告げて先を急ぎました。
今、この瞬間にも「或る人」は処刑されるかもしれない恐怖に震えている。一刻も早く助けなくては。「或る人」にとったら私に救われるのはきっと複雑な心境だろう。でも、それでも、私は「或る人」を救いたい。きっと「或る人」は、それでも私を好きにはならないだろう。でもいいんだ。
私は、私のために「或る人」を助けるんだ。
王様はそう決心しました。王様は幼い頃から読書家でした。特に歴史小説を好んでいた王様は革命が起きたら王侯貴族はどうなるか、よく知っていました。だからこそ、王様は急ぎました。到着した時、「或る人」がもし、処刑されていたら意味がありません。
それどころか、本当に、今度こそ、王様の心は壊れてしまうでしょう。これこそ、家来達が危惧したことでした。しかし、執事だけはこう考えていました。
王様が革命のことを一生知らずに過ごせれば、それが一番いい。しかし、きっとそれは無理だ。いつか必ず知ることになる。その時に心が壊れてしまっては意味がない。早く知らせ、早く革命を鎮圧してもらい、王様に「或る人」の命を救ってもらう。それが王様にとって1番だ。
と。だから執事は王様に伝えることに賛成したのです。
執事は王様が「或る人」をまだ愛していることを知っていました。他の人は誰も気づいていませんでしたが、お世話をしていた執事は気づいていたのです。
だって、涙に濡れた王様の枕を毎日取り替えるのは執事の仕事でしたから。
革命勃発から5日目の深夜、王様は街に着きました。
街は少し遠いところからでもわかるほど、とても深夜と思えないほど明るく、市民達の怒りを王様は覚悟して街に入りました。しかし、到着して王様は驚きました。市民達がワインやビールやシャンパンを飲みあさり、山のように積まれたパンや肉を頬張り、大声で笑い合いながら歌って踊って楽しんでいたのです。
王様が人に声をかけようとすると市民達はそれに気づき、口々に
王様が戻られた!
王様が汚れた貴族達から国を取り戻しに来られた!
天は我らに味方した!革命は成功したも同然だ!
と歓喜しました。王様は自分の帰還を喜ぶ市民達にありがとう、ありがとう、と言い、指導者はどこにいるのか尋ねました。すると群衆の中のある1人の男が
俺たちの指揮をとっている方々なら街外れの監獄で会議をしていますよ。史上最悪、厚顔無恥で挙句1人逃げようとして捕まったマヌケでトンマな「或る人」をこれからどう料理するか決めとるんです。
と言いました。それに付随してあちこちから
当然死刑さ!
その前に拷問だろ!
みんなで散々いたぶってやろう!
ギロチンなんて、楽には死なせねぇ!
俺たちみたいに苦しんでもらわねぇとな!
と声があがりました。
王様は顔面蒼白になり、その場で倒れてしまいました。
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