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「ふー。美味しかったね」
あれから店を出て今は来た道を駅に向かってふらふらと歩いているところだ
お会計は、俺から誘ったし女の子じゃあるまいしで遠慮したものの歳上なんだから、と言われてしまい結局善さんにご馳走になってしまったのだ
「本当にすみません…」
そう言うと少し前を歩いていた善さんが振り返ってその時に柔らかそうな髪がふわりと揺れた
「お手」
ニコニコと笑いながらとんでもないことを言い出した善さんに開いた口が塞がらない
「あの…犬じゃないんですけど」
「あはは、どう見ても人間だよね」
そう言うものの差し出した手を引っ込めてくれる様子もなかったので、仕方なく手を置いた
また、冷たい
「うん。おかわり」
「はい⁉︎」
揶揄われている気がしてならない
それでも善さんがあんまりにも楽しそうに、綺麗に笑うからまたやってしまう俺はアホだと思う
「はい。…つか何なん…」
「よく出来ました」
手を置けばそこにキャラメルが一粒置かれた
ご褒美…ということなのだろうか
「…ありがとうございます」
「いーえ。…爽太君の笑顔はとっても素敵だけど世の女性が見たら卒倒するだろうね」
なんだかすごい台詞をなんとなく言われたけれど
そんな事を当たり前のように言う善さんの方が世の女性を卒倒させるに決まっている
「えっと…なんでくれたんですか?いや、嬉しいですけど」
「えー?なんとなく笑った顔見たいなーって」
それは先程俺が奢らせてしまった事を気にしていたからなのだろうか
そう思うのは勘違いなのか、考え過ぎなのか
けれど一度そう思ったらそうとしか思えなくなってしまい、心臓の音がやけに耳に響いた
「爽太君、行こう?」
柔らかく鼻をかすめた甘い香り
心地良い少し高めのアルトの声
目尻が下がってふわりと笑う顔
太陽の光に透けてしまうような儚く綺麗な存在
全てが一瞬で重なって胸のざわつきをより一層掻き立てた
「………っ」
ドクン、ドクンと胸の鼓動が大きくなって
体を突き抜けて服に振動が伝わるようで
「はい」
この感情の名前は知らない
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