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「…分かりました」
騒ぎになりたくない、という善さんの意思を無視できるはずもなくしぶしぶ頷く
それこそこのまま俺が騒ぎ立てれば自分自身のエゴでしかない
了承すればホッとしたように安堵の息を吐いた
「おっさん、だからって今度同じ真似したら容赦しないから。流石にその歳で職を失くすなんて事になったらキツイだろ。
……あと、許すんじゃなくて見逃すんだから、間違えんなよ」
周りには聞こえないようにボソッと呟くとおっさんは青い顔をして、こくこくと頷いた
腕を掴まれたままの善さんの体を扉が開くと同時に窓際に寄せて、周りを俺が囲う形になった
「ごめんね、爽太君。嫌な役させちゃったよね……本当に…ごめん」
この人は自分がされた事を分かっているのだろうか
どこまでされたかは知らないけど、少し触るくらいじゃ済まない位にはやられてたろうに
「俺に謝らないでください。
迷惑だとも思ってないですし、一番嫌な思いしたのは善さんなんですから」
「…でも、ごめん」
降ろされた手はじっと見なければ分からないほどだけど、微かに震えている
辛い思いをしてるくせに何で隠そうとするのか、他人をこんなにも優先するのか分からない
そりゃ会ったばかりだしまだ心を許してもらっていないというのも理由の一つだと思うけど
だけど、こんなにも我慢して押し殺す必要がどこにあるのだろう
「…善さん、震えてます。……手」
そう言うとハッとしたように後ろに隠そうとしたその手を掴む
すると一瞬ビクッと体が強張った
「隠さないでください。…何でこんなに我慢するんですか?」
「あはは、本当に大丈夫なのに」
未だ震えた手を隠すように健気に笑う姿に一々胸が締め付けられる
俺が何を言っても、きっと善さんはサラリと交わしてしまうだろう
それなら……
「ちょっと待ってください」
周りを見渡すと、栄えている駅を通り過ぎたため人がだいぶ少なくなっていて満員電車では無くなっていた
動いても人の迷惑にならない事を確認してから、鞄をガサゴソとあさってペンと紙を出す
そしてそこに携帯の番号を書く
「これ、俺の携帯番号です。
掛けなくても良いです…ただ、今日みたいな事があったり何かあったら電話してください。
俺からの…お願い、聞いてくれますか?」
自分から番号を渡すのなんて生まれて初めてだ
その相手がまさか男の人だなんて思いもよらなかったけれど
「お願いなんて言われたら断れる訳ないでしょ。
でも、ありがとう…心配してくれたんだよね」
かさり、と細い指が番号を書いた紙を受け取って音を立てる
「やった、番号もらっちゃった」
そう言って善さんは完璧すぎる笑顔を見せた
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