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「てかさぁ、一色さんって同じ大学なのに全然会わなくね?」
「あー、確かに」
潤と歩きながらそんな話になって過去を振り返ってみると確かにそうだと思った
初対面は大学だったけれどそれ以降はバイト先でしか会っていないし、大学内ではあれから一度も見かけていなかった
「じゃ、俺はここで」
「は?何で?」
てっきり一緒に行くと思っていたのに違う方向へと足を向けた
俺が相当間抜けな顔をしていたのだろう、潤がクスクスと笑い出した
「俺の授業、今日休講なんだよね。
爽太も一応見ておいた方がいいんじゃない?」
そう言えば大学は全部掲示板に連絡事項が書いてあるんだった
慣れない事ですっかり忘れてしまっていた
「あー…分かった。ありがとう」
そこで潤と別れて掲示板がある場所へと向かった
その途中で女の先輩からサークルに勧誘されて思う事は面倒だ、と
善さんと会った時もこれがきっかけだった、と思い出していた
やんわりと受け流して逃げるように掲示板へと向かった
「…あ、休みだ」
潤の言う通りちゃんと見ておいて良かった
…後でメッセージ入れておこう
何もない暇な時間が出来たため、校舎をぐるりと回ってみる事にする
大学は校舎が広く、特に俺が通っている学校は構造が複雑で迷いやすい
未だ友達もそんなに出来ていなく授業に遅れてしまえば知らない人にノートを見せてもらうように頼まなければいけなくなる
話しかけるのは苦手ではないが、その後に顔見知りになるのがとても気まずい。
あの、挨拶をするべきかしなくて良いのか分からない微妙な雰囲気が面倒だと強く感じる
「わ……」
なんとなく隅の方にある奥の細い道を通って歩いていれば、見たことのない緑が広がっていた
そこには学生の姿はほとんどなく、大きな一本の木が印象的だった
なんとなくそれに近づいてみると息を飲むような光景が広がっていた
木漏れ日はステンドグラスのように模様を作り
その下には白に包まれた神聖で儚い人間が
「……っ」
風が足元を通り、髪の毛を揺らす
最初と同じ、甘い花のような香りを運んで
「………善、さん」
名前を呼ぶことを躊躇ってしまうほど綺麗で
「…あぁ。爽太君、こんにちは」
ゆるりと笑って、読んでいた本をパタンと閉じてから手招きをした
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