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「久し振り、ですね」
善さんは黒いゆるっとした薄手のニットに、黒いスキニーを履いていた
格好はシンプルで普通の人が着ていたのならなんとも思わないはずなのにこの人が着るとお洒落に見えて、思わず目を引いてしまう
黒い服装と白い肌、それがまた対照的で綺麗だ
「うん、そうかもね」
そうだね、とは言ってくれない。
そりゃ善さんにとっては俺はバイト先が同じただの後輩にしか思ってないはずだから当たり前と言えばそうなるけれど
少し、寂しい
「全然学校で会わないから、何してるのかなと思ってました」
そう言うと地面に落ちていた葉っぱを拾い、茎を持ちながらくるくると指先で回す
そして、ゆっくりと口を開く
「うーん、みんなが同じ事を、同じ空間に閉じ込められて、同じ速度で物事が進んでいくのが窮屈に感じて苦手なんだよねぇ」
善さんの言葉はいつも分かりやすくて、なんだか脆い。
壊れてしまいそうな程、脆いと感じる
「だからいつもここに居るんだ。
ここに居るようになってから初めて人と話したよ」
「……え」
それを聞いて驚きを隠せなかった
生徒は少ないにしてもゼロじゃないし、何よりこんな容姿をしている人がいたら話しかけに行く人も少なからず居るだろうに
「あはは、爽太君は本当に素直だね。
綺麗な心が開けて見えて凄く安心する」
安心する、とはどういう意味なのだろうか
自分と似ているから安心するのか
自分と似てないから安心するのか
でもきっと、後者だろう。
だって善さんの表情はどこか凍っているように見えるから
「善さんはここに居ていつも何してるんですか?」
すると、さっき持っていた葉っぱをピリピリと裂きながら話を続けた
「本を読んだり、ぼーっとしたり、眠ったり、特に何もしてないよ。
…でも今日はいつもとは少し、違う」
その続きが気になって、だけど真正面から見る事はできなくて
急かすようにどうな風にですか?と聞いてしまう
「今日は、つまらないはずだった時間に爽太君が来てくれたから。だからいつもとは、少し違う」
決定的な言葉は発さず、遠回しに享受してくれているような発言
「そうですか…良かったです。
また、ここに来ても良いですか?」
そう言うといいよ、とは言わずに笑顔で頷かれるだけだった
善さんはたまに、すごく残酷だ。
優しくて、穏やかで、柔らかいはずなのに
歩み寄ることも、手を差し伸べた後は掴んだままにせず、ひらひらと飛んで行ってしまう
そしていつも絶対に入るな、と境界線を引かれてしまう
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