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「詳しくは言えないけど善の家、ちょっと複雑でさ。だからそんな事爽太に言ったんだと思う」
複雑で、と濁された言い方で善さんの家がどんな状態だったかは分からないけれど千紘さんの表情から見るにあまり良くないのだろう
「でも、もし良かったらでいいんだけど善のことを諦めないんでほしいんだ」
「それは…どういう」
諦める、とはこのまま避けられることに対してなのかこの先の関係の事についてなのかは分からない
そして、千紘さんは困った顔のまま話を続けた
「善が最近爽太の話ばっかりするんだけど、その時の顔が嬉しそうでニコニコしてて。
…少し冷たいところはあるけど爽太の事を善は他の人とは同じに見てないから」
信じられない、話だ
善さんがニコニコしているのも想像がつかないし、それが俺の話をしているとはまた驚きだ。
善さんはよく笑うけど、少年みたいに笑うとかもあったし、静かに笑う時もあった
でも、いつもどこか影が落とされていた
「…千紘さんには気を許せるんですね」
そう言うと千紘さんはぷっ、と吹き出した
耐えられないと言うように肩を震わせてケタケタと笑う
「あはは…っ、ほんっと、善が可愛いって言ってたのがよく分かるなぁ。
そりゃ俺は小さい時から一緒だからある程度心を許してくれてるとは思うよ。
…でも、俺が知らない善はまだまだある」
小さい時から一緒にいるくせにね、とやや嘲笑気味にして言った
それから頭の上にぽん、と手を置かれる
「善のことを好いてくれてありがとうな。
昔ね、大事なものを作って無くなった時が怖いって善が話してくれたんだ。でも、同じような言葉を言って爽太から離れた善は、きっともう手遅れだ」
残酷な言葉に聞こえるはずなのにそれは、やけに穏やかで
千紘さんの言葉の本意が直ぐに伝わった
「なんだか、今直ぐ善さんと話したい気分です」
カランカラン、という音と共にお客さんが入ってきてこの話は終わった
善さんのことが分からずにいたけれど、千紘さんの言葉たった一つで隠された心が少しづつ見えていく
早く、会って話がしたい。
その事だけが頭の中を埋め尽くした
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