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それから今は樹の下で、いつかのように並んで話をしている
さっきのことは自分でも漫画かよ、と思ってしまうほどの台詞や場所で
それは善さんも同じだったようで恥ずかしそうにしてクスクスと笑った
「はぁ……2度も爽太君に泣いてるところを見られるなんて思ってもみなかったな」
諦めたように笑ってから顔にかかった髪を指で耳にかけた
「ねぇ。何で俺があんな事言ったのか聞かないの?」
その問いかけに、俺は少し苦笑いをして善さんに向き合う
目がさっき泣いたせいで赤くなってしまっている
その目を撫でると少し熱を持っていて、いつもは冷たい善さんの体温だから不思議な感覚がする
「気にならない訳じゃないですけど、善さんが言いたくない事ならいいです。
理由がなんであれ今はこうして話してくれてるので俺はそれで十分です」
一人でいるときは暖かいはずの日差しも眩しいとしか感じなかった
でも善さんといると日差しが暖かく感じられて、やっぱり俺はこの人の事が好きなんだと改めて思う
「随分と俺のこと甘やかすね」
「だって善さんは自分に厳し過ぎますから」
人にはとことん甘いくせに自分には引くぐらい厳しい
そんな人の事を甘やかしたいと思うのはきっと、俺だけではないはずだ
「そうでもないよ。
今も傷付けた相手にこうして甘やかされてる自分の状況を許してるんだから」
善さんはだんだんと心を開いてくれている気がする
前なら穏やかな言葉だけで、笑顔を絶やさないそんな人物だと思っていたけれど
今は、心の冷たい部分も見えて、前よりも人間っぽくなった気がする
それでも相変わらず優しいところは底抜けに優しくて、冷たいと感じる部分だっていつも自分自身に対してだ
「俺が許してもらうようにお願いしたようなものですから、気にしないでください。
…それに、傷付いたとは言いましたけど傷付けられたとは思ってないです」
すると、また善さんは切なそうに顔を歪めた
「…俺は、さ…愛された事がないから誰かを大事にできる自信がない。
だから、爽太君の事もさっきみたいにまた傷付けてしまいそうで…怖い」
愛された事がない。
その言葉は深く突き刺さって
当たり前のように家族から愛情を貰っていた俺にとっては想像がつかないような痛みだろう
「俺は………俺は、善さんのことが好きです」
だから愛された事がない、なんて言わないでほしい
「……え?何言って…」
「この状況の取り繕いなんかじゃなくて、前からそう思ってました。
気持ち悪いと思って、引いてもいいです。
…でも、俺は善さんの事をずっと好きでいます」
せっかく仲良くなった関係をここで切れてしまうのは絶対に嫌だった。
でも、それよりも善さんの心の痛みを知らないふりをする方がずっと嫌だった
「…気持ち悪いとか、思うわけないでしょ」
底抜けに優しい、善さんの言葉は元気付けるはずの俺の方に優しく響いた
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