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「ごめん、遅くなっちゃって…」
今度こそ人気のない場所に移動すると俺の手を解いて申し訳なさそうに言った
きっと善さんは俺が暑いと言っていたから冷たい飲み物を買ってくれようとしたのだろう
だが近くに自販機が無くて遅くなった、という事だと思う
「いや、大丈夫です。
飲み物ありがとうございます、これ俺がすごい好きなやつです」
善さんは満足そうに微笑んで、良かったと呟いた
それから今度は困ったように笑って俺を見た
「爽太君は何処にいても目を惹くみたいだね」
善さんはそう言うけど、それは俺がいう言葉なはずだ
人のことには敏感なくせに自分のことにはどうしてこんなにも疎いのだろうか
「善さんが隣にいるからですよ」
「ふっ、謙虚だなぁ。そういうところも女性に人気な理由の一つなんだろうね」
謙虚?それを言うなら善さんの方だ。
話の流れからして完全に善さんのことを話そうとしているというのに
「おんなじ学部の人の間でも噂になってるよ、爽太君。カッコいい一年生が入学してきたって」
むさか、そんな訳があるはずがない。
善さんはともかく俺はあり得ない
「はいはい」
「あー、嘘だと思ってるんでしょ」
こうして善さんと笑い合う時間はすごく好きだ
何をしていても楽しいし、なんなら無言の時間だって善さんが隣に居れば嫌に感じたりもしない
「もうすぐ夏休みですね…」
「うん。すっごい話変わるね」
携帯の番号を渡したのはいいものの、善さんからの着信は一度もなかった
そりゃ何かあったら、と言ったから何もなければ電話を掛けないのが普通なんだろうけど
「…二ヶ月くらい会えなく、なりますね」
「…っぷ、…あははっ」
何の気なしに言った言葉だった
でも善さんがあまりにも嬉しそうに、楽しそうに笑うからつられて俺も訳がわからないまま笑う
「え?何ですか?何でそんなに笑うんですか」
肩を震わせて手の甲で口を覆いながら笑う姿はとても可愛らしい
「あはは…っ、だって、あんまりに可愛いこと言い出すから…、はは…っ」
そう言われて自分がした発言を思い返して、
赤面した
「いやっ、あれは違くて…いや、違くはないんですけど…でも、えっと……すみません…」
何だかとても恥ずかしくなり、赤い顔のまま項垂れると善さんは何やらごそごそと鞄から紙とペンを取り出した
そこに書かれていく数字に、恥ずかしさなどどうでも良くなってしまった
「はい、何かあったら電話してください。
俺からのお願い、聞いてくれますか?」
いつかの誰かの台詞をそのまま言われ、驚いていると善さんはまた笑った
「俺も、会えないのは寂しいなって思ったから」
凄まじい殺し文句を投げ込まれたこの日が夏休み前の大学の最終日
最高の1日となった
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