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善さんのいきなりの告白に戸惑い、混乱、感動
さまざまな感情が波のように一気に押し寄せて制御をしきれなかったものが瞳から落ちた
それを見られたくなくって善さんを抱き締めると腕の中にすっぽりと収まってしまう
「…爽太君、泣いてるの?」
「泣いてないです」
こんな震えた声で言ったって説得力のカケラもない
腕の中からそっと善さんが顔を上げると、その細い指で俺の顔を包み込んだ
相変わらず冷たくて、華奢だ
「…泣かないで」
あんまりにも縋るように言うもんだから、つい笑ってしまうと安堵の息を善さんは溢した
「…ってか熱あるんですから、本当に横になってください」
細い体を布団の上に寝かすと、掛け布団の隙間からそっと手を出した
その意味が分かって子供みたいだ、と笑ってから握る
「あったかい…」
そう呟いた善さんは、懐かしむように切なげに目を細めた
この顔は初めて見る顔だ。
「…ねぇ、爽太君の家族の人はすっごく暖かいんだろうね」
その言葉にどきり、と心臓が跳ねる
以前千紘さんから善さんの家は複雑だと聞いていたからこの手の話題は避けていたのだ
それを善さんから振られてしまえば避けようがないし、どうしたらいいのか分からない
「えっと、そう…ですね」
そう言うと善さんは穏やかに微笑んでから目を閉じた
そしてまた、閉じられた目から一筋の涙がこぼれ落ちた
「…善さん……嫌だったら答えないでいいです。
善さんの家族は、どんな家族でした?」
そう問いかけると閉ざした口が少し震え、薄く開けられた横目で俺を捉えた
それはもう、嫌な予感しかしなかった
「…暖かい時もあったし、そうじゃない時もあった。」
濁すような言い方で、けれど悲しみが押し寄せるようなそれに胸が締め付けられる
このまま避けていたら善さんの心も、見過ごすことになる
ズカズカと人の心に踏み込むのはよくない
でも、それじゃあいつまでたっても変われない
「…俺に、話してくれますか?」
ゆっくりと頷いてから重い口を開いた
俺を捉えたその視線は、助けて、とまるで言っているようで
善さんと話していると、時々すごく泣きたくなる
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