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. 善side
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「ごめん、ほんっとごめん」
「大丈夫ですって。そんなに謝らないでください」
なんというか、本当に俺は有り得ない。
自分だけ良くしてもらった挙句、眠ってしまうなんて
しかも、汚れたはずの体は綺麗になっていて洋服も着ているので爽太君が全部してくれたに違いない
「善さん、夜眠れないんでしょ?
クマもあったし疲れが溜まってるのにあんな事したら体力の限界が来るのは当たり前です」
穏やかに笑って頭を撫でる爽太君にますます申し訳なさを感じる。
頭を撫でられながら、爽太君は今までに出会ったことのないタイプの人間だったと思い返す
***
「ねぇ、少し困ってるみたいだよ?彼」
最初にそう声を掛けたのはあまりにも、可哀想に思えたからだった。
声を掛けて顔を見ればとても整った顔の青年が中心に居て心底驚いた
けれど、その青年も俺を見て驚いた顔をしていた
その青年の、つまり爽太君の第一印象は怖いくらい顔が整った子だな…と思っただけ。
その後に深い関係を築くことも、俺がこんなにも惹かれる事も予想してなかった
けれど、だんだんと爽太君の真っ直ぐさに魅せられていって
『 あ、爽太君の手って暖かいね
すごい、ポカポカする。春の日差しみたい 』
何気ない言葉のつもりだったそれは、爽太君の顔を曇らせてしまった
『 違いますよ。俺が優しいんじゃなくて善さんが優しいから集まるものも優しくなれるし、見えるものも優しい世界に見えるんです 』
爽太君の何気ない言葉のつもりのそれは、俺の冷たくて汚い心を浄化するように溶け込んだ
いつだって温もりをくれて、俺が間違った方向に進んだとしても無理矢理にでも正解にしてくれる
強くて、誰よりも優しい君だからこんなに俺は夢中になったんだ
もう俺は、君なしじゃ生きていけない。
というより生きている意味を見出せなくなる。
きっと、こんな事を言ったら優しい爽太君は叱ってくれるのだろう
千紘以外の周りの人間を大事には思えなかったし、どうでも良いとさえ思っていた
でも、今は駅のホームで爽太君によく似た後ろ姿を見つけるとつい足を止めてしまう
よく似た声、よく似た香水
自分でも女々しいと思うけれど、爽太君が大事だと気が付いてからはそこら中が爽太君で溢れている
そんな小さなことも幸せだ、と感じる事ができた
その反対側ではお前だけが幸せになるな
そう何処かから声が聞こえてくる気がする。
俺も、そう思う。
自分だけが幸せになるなんて図々しいにも程がある
だけど、爽太君だけは俺からは奪わないで欲しい
目でも、手でも、足でも、声でも
なんでもあげるから
爽太君だけはどうか、俺の目の前から消えないで
そう、ベットの中で願う夜も増えた
***
「善さん…?どうしました?」
暗い気持ちになってしまうと直ぐに気が付いた爽太君は俺の顔を覗き込む
その顔は心配そうに歪められていて、俺がこんな顔をさせてさせてしまっていると思うと苦しい
「ううん、何でもないよ。」
「えー、本当ですか?」
怪しんだ横目で見られるけれど、笑い返すとそれ以上追求はされなかった
「あ、すごい気持ちよかったです。」
俺がそう言うと面白いくらい顔を赤く染めてから鎖骨を片手で抑えた
照れてるときの、癖なのかな。
「それは、良かったです」
「うん」
穏やかな時間が流れる夕方
夏の暑さは照りつける太陽の時間から外れて
生暖かい風が木を、草を、花を揺らす
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