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「善さん…っ!」
「わっ、びっくりしたぁ」
手にはテストの結果を握り、あの樹の下にいる善さんに後ろから抱きついた
服越しでも分かるくらい華奢な体を肌に感じる
「…テスト、どうだった?」
本人よりも不安そうな顔をして聞く善さんに、ふっと笑みが漏れる
そんな事を気に留める様子もなくただ手に握られた髪を見つめていた
「じゃーん!」
そこに書いてあったのは平均点よりも25点高い答案で、予想していた点数よりも上だった
それを見るなり、安心したように穏やかに微笑んで周りを確認するようにキョロキョロと見渡す
そして、俺にぎゅっと抱き着いた
「はー、良かった。不十分だったらどうしようかと思ってたんだよ」
あの分かりやすい説明が不十分な訳がない
なんなら教授に聞くよりも、単純明快で解りやすかったと言うのに
「何言ってるんですか。あんなに教えてくれたんですから大丈夫ですよ」
ほんと、自分よりも他人のことを考える人だ。
それが善さんの良さでもあるし、でも少しはその優しさを自分に回して欲しいとも思う
「うん…爽太君は飲み込みも早いし、基礎教えるだけで応用も直ぐ出来てたから大丈夫だとは思ったけど、そこまでに行く情報量が足りて無かったらどうしようかと…」
つまり、点数がもし悪かったら教えきれなかった自分が悪いと言いたいのだろうか
そんなの塾講師をしている大学生からしたら耳がいたい話だろう
そこまで深く考えるのは、やはり善さんらしいというか何というか
「はぁ…ほんと、その自己犠牲どうにかならないんですか」
「え?何が?」
本当に分からないと言うように、すっとんきょうな声を出す
でもこれは、前に話してくれた過去が関係しているんだろう
人間の考え方や、その性格は周りの環境で決められてしまう
伸び伸び育てられた子は柔軟な考えや、自分を表現するのが上手くなる
逆に、押さえつけるように育てられた子はいつのまにか自分を表現することに臆病になる。
親はそんなつもりは無かった、と言うかもしれないが事実はそうなのだ
ただ、そこに大きな違いがあるとすれば愛があるかどうかだ。
幼い頃、窮屈に育てられたとしても愛があると大きくなってから知れば、その可能性はまた無限に広がるだろう
「…爽太君?」
心配するように覗き込む、この優しい人。
何らかの形で親からの愛が途切れてしまったのなら、俺がその分愛したい
それで、この誰よりも優しくて、誰よりも大切なこの人の可能性を広げて欲しい
「はい、これお礼です。」
キャラメルを一粒手の上に置く
それだけで穏やかな笑ってくれる
「嬉しい、ありがとう」
「…てか、善さんは試験どうだったんですか?」
勉強を教えてもらった後から聞いたのだが、善さんも試験があったらしかった
だから今こうして大学内の樹の下に2人して居られる訳だ
「…え?満、点……?」
「うん」
「恐ろしい…何なんですか、本当に」
「キャラメル美味しい」
「……」
善さんもテストなのに教えてもらって申し訳ないと思っていたが、当たり前のように見せられた満点の答案にそんな心配は要らなかった
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