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. 千紘side
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「善、また痩せた?」
ワイシャツ越し見る体は細く、それは以前よりも増した気がした
そう聞くと善はフワリと微笑んで俺の隣に腰を下ろした
「そんな事ないよ。千紘は心配し過ぎ」
本人はそう言うけれど袖をまくった腕は女の人のように華奢で、腰で結ぶタイプのエプロンは細過ぎるせいでリボンが有り余っている
「心配するに決まってるでしょ。
たった1人の幼馴染なんだから」
「…うん」
頭を少しもたげて、俺の方に埋めた
こうして甘えるのは昔から変わらないな、と思わず笑みが溢れる
「ねぇ…もし俺が……いや、やっぱ何でもない」
何でもない、そう言うには震え過ぎた声色に無視なんて出来るはずがなかった
肩に当たる頭を胸に移動させてぎゅ、と抱き締める
そうすると、華奢な体はすっぽりと収まってしまう
「なーに?言ってごらん。」
「いや、ほんとに大丈夫」
そう言うくせに、顔はずっと胸から上げようとしない
けれど腕は縋るように胸元を掴まれて切なくなる
「大丈夫だから話して…何年一緒に居ると思ってんの。俺のこと信じて。……な?」
背中をあやす様にトントンとリズムよく叩けば、ゆっくりと胸から顔を上げた
善は今にも泣きそうで、その表情を見るのは多分善のお母さんが旅立った日以来かもしれない
「…もし、俺が…男が好きだって、言ったらどうする?」
その言葉にどきり、心臓が音を立てる
けれど善が言っている事、そして誰を指しているのかが直ぐに分かった。
それがもし、でなく現実的にもう起こっていることも同時に分かった
「爽太のこと?」
「え…どうし………っあ」
その返答はもう認めている、と言うような言葉で途端善は焦り出す
パニックになってしまわないように少し離れた体をもう一度抱き寄せる
「大丈夫大丈夫。落ち着いて。大丈夫だからね」
「……っ、千紘」
もう泣いてしまっているのだろう。
善は本当は誰よりも傷付きやすくて、誰よりも臆病で、誰よりも強がりだ
そんな自分を隠すように笑い続けるなんて、ボロボロの心に拍車をかけるだけだ。
それでも、笑っていないと自分を保てない、そう善から聞いた時は胸が張り裂けそうだった
「正直、驚いたけど直ぐに分かったよ。
だって爽太と話してると、いつも自然に笑ってるし、感情が表に出るようになったから。
……善はそれ、気がついてた?」
ポロポロと涙を流した善のそれを指ですくう
それでもとめどなく溢れては、俺の指を濡らしていく
「…分かんない。でも、爽太君と居ると…ポカポカする。あったかい」
「ん、そっか…なら良かった。
それを言って俺がどう思うのかが怖かった?」
そう聞くと、止まりかけていた涙がまた溢れそうになり背中を撫でる
「ほんっと馬鹿だなぁ。はは…っ、頭はいいくせに、こういうところは分かんないんだよな」
「だって…嫌われたら…っ、どうしようって」
本当に、馬鹿だよ。お前は。
俺がどんだけお前のことを大事に思っているか知らないなんて
「嫌いになるわけないでしょ?
小さい時から一緒にいて、面倒を見てたんだから可愛くて仕方がないんだよ。
今はこんなに大きくなったけど、俺の中じゃまだまだ子供で、何でもしてやりたくなる」
どんなに大人びたって小さい頃の面影や、泣きそうになると手をギュ、と握り込む癖は変わらない
この瞳で見つめられれば、どんな事でも叶えてやりたくなった。
「…うん、ついでに言うともう付き合ってる」
「ふは…っそれがついでなんだ」
泣き止んだのか俺から体を離すと、逆側を向いて涙を拭った
向けられた後ろ姿はなんだか寂しそうだ
「千紘は、居なくならないよね?」
「無駄な心配事はやめなさい。大丈夫だから」
そう言うと花が咲いたような笑顔を見せた
居なくならないよねって聞くけど、善が目の前から消えそうで俺の方が心配だよ
でもきっと爽太が居るから大丈夫だ。
「千紘、ありがとう」
「どーいたしまして」
爽太ならきっと、善を幸せにしてくれる
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