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解散、と言ったものの千紘さんと善さんは幼馴染で家がもちろんのこと近い、
俺と善さんも近いという事がつい最近判明したので正確に言うと翔だけが別方面だったという事だ
「善はこっち来な」
善さんをドアに寄っかからせて、千紘さんは直ぐその後ろに立った
俺は千紘さんの横に立って二人で善さんを囲う形になる
「すっごい守られてる感じがする」
笑いながらそう言っているけれど、千紘さんも直ぐにこの体勢を取るという事は以前にも痴漢にあった事が恐らくあるのだろう
善さんは容姿は良い意味でも、悪い意味でも良過ぎてしまう。
そういう変な趣味持った奴等を故意せずに引き寄せてしまうことはきっと多々ある
「だって善、潰されそうなんだもん」
「えー?酷いなぁ」
そうする理由が、潰されそうと言った千紘さんに俺も同意する
あくまでそういう理由ではなくただ単に物理的な衝撃が加わると、わざわざ言う千紘さんにさっきの憶測は確証に変わってしまった
「わっ、混んで来たね。大丈夫?こっち来る?」
俺の手を掴んで不安そうに見つめる善さんに思わず笑ってしまう
「ふはっ、何でそんなに不安そうに見るんですか。大丈夫ですって」
「そーそ。舐めてもらっちゃ困ります」
俺、千紘さんが続けて言うと善さんは少し不服そうにした
それを見て珍しい顔だと千紘さんは興味深げに見ていたけれど
「話変わるんだけどさ、結局遊びに行くのって海だっけ?」
「んー、多分ね。みんな他にも行きたいところがあるなら別だけど、無いんなら翔が行きたいって言ってたしそこでいいかなーって」
海か…最後に行ったのっていつだっけ?
多分高校一年の夏休みかもしれない。
高校に入学したての頃は友達と学校で過ごすのが楽しくて楽しくて、遊びの計画はぎっしりと詰め込んでいた
だが、それに慣れてしまった2年、3年目は海にも、プールにも行かずに家に友達を呼んでだらだらと過ごしていた
「爽太君って泳げる?」
「溺れない程度には」
特別得意ではないけれど、不得意というわけでもなかった
ただ、バタフライが授業で出てきたらあってるか分からずになんとなーくやってみる
そんな具合だ
「とか言って爽太は絶対上手いよ。自慢とかしないから言わないだけでさ」
「うん、俺もそう思う。
でも泳げなくて浮き輪つけてぷかぷか浮かんでるの見てみたかったなー」
善さんはたまに衝撃的なことを普通な顔をして言ってのける
それに千紘さんも耐えられない、と言うように吹き出して肩を震わせて笑っていた
「あはは…っ、いかにも泳いでるのかっこいい〜とか女子に言われてそうなのに…っ、浮き輪つけて浮かんでんのとか可愛過ぎでしょ」
「いやいやいや、可愛くはないですって」
善さんは一人、キョトンとした顔でそうかなー?と言っている
本当、頭がいいのに抜けているというか何というか
実は天然なのかもしれない
「着いた………っ、わ」
「ちょっ……と…びっくりした」
ドアが開いた瞬間後ろの客に押されて善さんはそのまま前のめりになり転びそうになったのを細い腕を引いてなんとか阻止する
そして邪魔にならないように横に避けて人が少なくなるまで待つ事にした
「もー、善なにやってんの。大丈夫?怪我してない?」
呆れたように千紘さんはそう言うけれど、とても心配そうな眼差しを向けていて上から下まで怪我をしていないか見ている
「大丈夫大丈夫。ごめんね。爽太君も平気だった?」
「はい。…というか前にもこういう事ありましたよね」
思い出し笑い、というものをしてしまうと善さんも思い出したようでほんのりと頬を赤く染めた
「なに、前も転びそうになったの?」
千紘さんはもう笑うしかない、と言うように善さんを見ながらそう言った
善さんも同じように笑ってからそうなんだよね、と続ける
「前も爽太君に手を引っ張ってもらってなんとか大丈夫だったんだけどね。はー…本当に恥ずかしい」
「爽太が居てくれて良かったね。じゃないとその足折れてたよ」
「あはは、大袈裟だな」
「善さんの場合大袈裟に感じないんですけど」
そんな会話をしながら最寄駅から3人で肩を並べて歩いた
夏の夜は生暖かい空気が体を包んで
雨が乾いたような匂いを運ぶ
待ち遠しい日がまた新しく出来た
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