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「っ、善さん、こっち」
「うわ…っ、待って」
混み過ぎているせいで真ん中に移動しようと考えた計画崩れ、もう既にはぐれそうになっている人が一名。
「善、爽太に捕まってな」
「…うん」
狙われるわけがない俺と千紘さんと翔は善さんを囲うように立つ
「ははっ、善さんもー疲れてるじゃないですか」
「えー?そんな事ないよ」
翔が笑いながらそう言うと善さんは笑いながら否定する
翔は人懐っこくて、誰とでも直ぐに仲良くなれる
そういう性格のおかげで、他人には関心を全くと言っていいほど持たない善さんが打ち解けやすかったのかもしれない
「あと何個乗るんだっけ?」
「んーと、あと八個。」
千紘さんがそう言うと善さんはへー、そんなもんなんだ、と安心したように言った
やっぱり疲れてるんじゃないか、と思わず笑ってしまう
「爽太君の笑顔って春っぽい」
「何ですか、それ」
春っぽいとか言われたことがなかった
善さんは…冬っぽい、気がする。
「なんかぽかぽかしてる」
「ふは…っ、よくそれ俺に言いますよね」
最初に会った時にも手が暖かい、ぽかぽかすると言われたことを思い出す
「じゃー善さん!俺はどの季節っぽいですか?」
「即答で夏」
その返答に千紘さんはクスクスと笑う
俺も聞かれたのなら即答で夏、と答えるだろう
翔はいつも元気で、第一印象は少しチャラチャラして見えるところもあるけれど深く関わるうちに情に厚いし、優しい
キラキラしてて、元気で、熱い翔はまさに夏
「千紘は秋っぽいよね」
「え、そう?」
意外だ、と思う。
千紘さんは優しくて包容力があり、春っぽいと思っていたからだった
千紘さん本人も意外そうに目を丸くして善さんの言葉を待っている
「千紘って良い意味で人に合わせて言葉とか、表情とか変えられるからなんか紅葉っぽいなーって。」
善さんは表情は豊かな方でないけれど、心は人一番敏感なのだろう
その表情が豊かでないのは多分、心が敏感すぎて周りを気にしてしまうからだ。
「ふっ、それはどーも。善は冬っぽい、かなぁ」
「あはは。そうかもね」
そうかもね、そう言った真意は何なのだろうか。
綺麗に見えるその容姿や雪に溶け込みすぎる肌の白さを想像してなのか
はたまたいつか前に言っていた、心が冷たい
それなのか。
きっと、後者だろう
「でも冬って寒いから心をポッとさせるものが多いですよね。…ほら、鍋とか、肉まんとか」
そう言うと伏せられていたまつ毛が上がり、黒目を揺らして俺を見つめた
その顔は、泣きたい、そう言っているようだった
「ふっ、食べ物ばっかり」
「いーじゃないですかー」
それでも穏やかに笑おうと努める善さんに、俺は気づかないふりをした
だって、その泣きたい顔は悲しそうな顔じゃなくて穏やかな顔だったから
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