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「……っ、にしてんだよ!」
馬乗りになる男を善さんから引き剥がして、一発頬を殴る
「ちょ、…ちょっと待て、そいつから誘ってきたんだよ」
焦ったように訳の分からない事を言い出した男たちに冷たい視線を向ける
本当に、全てが不快だ
「黙れ」
その場を必死で繕おうとする男たちに、言葉を発することさえわずらわしく感じる
横たわったままの善さんを起こそうと手に触れると、ビクッ、と体が硬直して
拒絶するように震え始める
「……っ、善さん」
その瞳には輝きなどない、ただ雫が流れ落ちるだけの機械になってしまったように
「爽太!善!」
凛々しい声の正体は千紘さんだ。
この状況を見ると千紘さんは静かに男たちに詰め寄って、翔は善さんのそばに腰を下ろした
それから着ていた上着を善さんにかける
「ねぇ、これって犯罪なんだけど。
分かる?あんたらに」
「は?何言って…」
「強制性交等罪。5年以上、20年以下の懲役」
たんたんと事柄を告げると、男たちの顔が歪んでいく
そして、千紘さんの男たちを見る目はまるでゴミでも見ているようだ
「ただで済むと思うなよ」
「……千紘」
ビリビリとした雰囲気を破ったのは他ならぬ善さんのか細い声だった
千紘さんはしゃがんで善さんを見る
男たちは翔が見張っているし、顔バレもしているしで逃げたりはしないだろう
「いいよ…もう、何もしないで」
「…は?」
その言葉に思わず漏れた声だった
何も、しないでって…何だよ
「そんな事されて、もういいって何だよ…
善さん…どうして?」
「知られたくない、人がいるから。
もし…このまま警察に言ったり、したら…親には伝わるでしょう?…それは、嫌だ」
知られたくない、人、親
その単語単語でも誰に知られたくないかが分かってしまう
きっと、父親に善さんの母親が亡くなってから、強く当たられたと聞いたけどそれが関係しているに違いない
それは千紘さんも同じだったようで顔を切なそうに悔しそうに歪めた
「…善さんがそう言うなら、仕方ない」
「爽太っ!」
俺の言葉に千紘さんは声を荒げた
真っ直ぐに見抜かれる視線、そこに映る俺はどうしようもなく情けない顔をしていた
「…俺は、善さんのことが大事だから善さんが望む通りにしたい。
もしそれが世間からしたら間違ってる事だとしても、俺は側にいて寄り添ってたい」
本当は、警察にでも突き出して善さん以上に辛い思いをすればいい
そしてそのまま立ち直れないぐらい傷付けばいい
そう心の中で今も思っている。
でも、善さんが好きだから、もうこれ以上傷ついて欲しくないし叶えられるものなら何でも聞いてあげたい
だから、悔しい気持ちを押し込んだ
手のひらに爪が食い込むくらいギリギリと握りこむと、千紘さんはそれを見て目を丸くした後、押さえ込むように息を吐いてから分かった、と呟いた
「…あんたら勘違いすんなよ、罪に問われないからって許されてると思うな。分かったらとっとと失せろ」
自分でも予想だにしないほど低い声が出て、それに善さんは体を縮こめた
貴方に怒っている訳じゃないのに。
「善さん」
横たわって、上着を無造作にかけられた善さんにそう声をかけるけれど
以前のように頬を赤らめたり恥ずかしそうに目をそらしたりはしない
「善さん…………」
怖い
それだけが伝えられるような視線だった
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