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「善、今から電車乗るけど少しでも無理そうだったら直ぐに言うんだよ?
迷惑かけるとかそういうの気にしないでね」
みんなで着替え終え、海を早々と出て今はホームにいるところだ
あんな事があった後で人混みの中に行くなんて出来ればしたくないが交通手段がこれしかないのだ
「うん、ごめん。ありがとう」
半袖を着てきてその細い腕には暴行された痕が残っていて痛々しい
そして、俺の服の裾を控えめに握ってそれが小刻みに揺れているのもまたそうさせた
「俺が盾になりますから!大丈夫っすよ!」
「あはは、頼もしいな」
本当に翔は良い意味で場の雰囲気を変えてくれる
四人で意を決して電車に乗り込むと朝ほどではないが、家族連れなどが帰宅する時間に被ったらしくまぁまぁ混んでいる
けれど、サラリーマンなどは少なく車内は小さい子供や親ばかりでひとまず安心できた。
それは俺以外の3人もそうだったようで安堵の息を漏らしていた
善さんは窓に寄っ掛かりながら外を見る
その姿がとても儚く見えて、とても、綺麗で声を掛けられなくなるほどだった
まつげは泣いたせいかキラキラと光っていて、目元もわずかに赤い
すると、眉が一瞬苦しそうに寄せられて直ぐにそれは元に戻った
あれだけの事があった直ぐ後だ、心の中の戸惑いや恐怖があっておかしいことじゃない。
そんな善さんの様子を見て今日の夜は二人で過ごそうと決めた
「善さん、今日家に行っていい?」
もう翔にも千紘さんにも関係を知られた今、ある程度はオープンにできるようになった
「え、どうして?」
きょとん、として俺を見つめる善さんは本当に鈍すぎる。
その会話を聞いていたらしい翔と千紘さんもそう思ったのか、呆れたように肩を落とした
「善さんを一人にするの、不安なんです」
あの部屋に一人にしておくのは気が引けた。
生活感が本当にないあの部屋で、弱っている時に一人で過ごさせるのは良くない気がする
以前、千紘さんにも善は一人にしちゃ駄目だ、と言われたことがあって本当にその通りだと思う。
「えー?大丈夫だよ。俺男だし」
「男とか女とかじゃなくて、本当に心配なんです。…お願い、善さん」
さっきまで窓の外を切なげに見ていたとは思えない声のトーンで笑いながら話す善さんに心配が増す。
それは、どこか心が壊れてしまったのではないかと思ったからだった
「じゃあ…お願いします。ありがとうね」
こうして、俺は今夜善さんの家に泊まることになった
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