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料理が完成してテーブルに持って行く。
季節は夏だが、優しい味付けに合う様に今日は暖かい素麺に仕上げた
ソファーに横になる善さんを覗き込むと瞼が閉じられていた
けれどその姿は安眠と言えるほど穏やかではなくむしろ苦しそうに寝ていた
こういう時は休息の妨げになるだろうから寝かし続けた方が良いのかもしれない
けれど、あんまりにも苦しそうに眠るもんだから気が付いたときにはもう、声を掛けていた
「善さん、…善さん。ご飯出来ましたよ」
触るのは怖がらせてしまう気がするから、名前だけを呼ぶことにしたのだが一向に目を覚ましてはくれない
少し躊躇いながらも肩にそっと触れて体を揺さぶる
すると、善さんの目がゆっくりと開くと同時に涙が溢れ出した
「っ、……ふ………っぅ」
子供のようにしゃくり上げる姿に胸が痛んだ
そして、俺の方に手を伸ばして抱き着いてくる善さんを迷わず受け止める
やっぱり体は震えたままで、まだ他人に触られるのは怖いんだろう
でも、俺からは離れようとしなかった
「善さん…嫌な夢、見ちゃいましたか?」
「………っ、うん…」
縋るように背中に手を回されて、より一層強く抱き合う
だんだんと肩が濡れていく感触がして、善さんの背中をあやす様にさする
「……っ、そう、た…くん…今日は、帰らないで……やっぱり一人に、なりたくない…っ」
さっきは出さなかった弱音がポロポロと涙と一緒に流れ落ちる
「はい。大丈夫ですよ、側にいます」
腕の中で泣きじゃくる善さん
こんな風にしたあいつらのことが許せない。
もう少し殴っておけば良かった、そう物騒なことまで脳内に浮かんだ
「ごめん…お素麺冷めちゃうね」
そう言って腕の中から抜けて、無理に泣き止もうとする善さんをもう一度抱きとめる
「そんなの温め直せば済みますから」
ご飯は冷めてしまっても、もう一度火にかければ簡単に温まる
でも、善さんの壊れた心を治すことなんて出来るのだろうか。
今の善さんは最初に会った時の様な
どこか、危うい雰囲気がした。
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