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「翔に包丁握らせんのホラー映画よりよっぽど怖いんだけど」
キラリと刃先が光るそれを、ダンっと食材ごとまな板に叩きつけた。
見ていられなくて翔の手から包丁を奪い取り、さっさと切ってしまう
「すげー!爽太って何でも出来んのな」
「ほんと。完璧な男ってどこまでもそうだよね」
すげー、というかお前が包丁を握らないように早く切ってんだっつの。
それに気が付かないのは流石というか、なんというか
「えっと次何すればいい?」
そう聞いてくる翔は母親の手伝いをする子供のようだ。
「んー、じゃあピーラーで人参剥いて?」
「…っいやいやいや、ピーラーはこっちだから」
大根おろし器を手に取ったと思えば、千紘さんが直ぐにピーラーを渡す
…….翔大丈夫か。
「指切らないようにね」
「え?それってフリ?」
「な訳ないでしょ。ほら、危ないからちゃんと手見て」
俺、翔、千紘さんの順で話して相変わらずお調子者の翔を落ち着かせている千紘さん。
千紘さんは翔の面倒を見るので精一杯なようだ
「んー…善さんどのくらい食べられるかな。米何合炊こう…」
「あ!俺が食べるから沢山炊いて!」
じゃあ沢山炊こう。もし余っても少しなら冷凍しておけばいいし
「分かったから余所見しないで」
翔が手元から視線を外すたびに冷や汗が流れる
料理ができないくせに、なんで集中しないのかが本当に理解出来ない
「あ、ちなみに甘口で」
そう。俺らはカレーを作ることにしていた
一人暮らしにカレーはもってこいの食べ物で、ルーは常にあると言って良いくらいストックしてある
「つか善さんなんかもぞもぞしてない?」
余所見をしないという事がこんなにも翔にとって難しい事なのか
けれどその言葉が気になってベッドに視線を向ければ確かに布団が少し動いていた
「ちょっとごめん」
狭い台所を抜けて、ベッドに辿り着いて見てみると、魘されてしまっていたようだ
眠ってからまだ30分弱しか経っていないのにこんな様子じゃ休めたとは言えないだろう
それでもあまりにも苦しそうだからつい、肩を揺すって声を掛けてしまう
「善さん、……善さん、起きて」
すると、パッと瞳が開かれて俺を見ると安心したように息を吐いた
「爽太君、おはよ」
「はい。遅ようございます」
俺がそう言うと、善さんはクスクスと笑って夢のせいで少し潤んだ瞳を片手で乱暴に拭った
それからその冷たい手で、俺の手を取って繋いだ
「善さん……?」
二、三度辛そうに深呼吸をしたと思ったら次は穏やかに微笑まれる
その様子がなんだかとても、痛々しかった
「…うん、元気でた。なんかいい匂いするね?」
今は二人がいるから無理だけど、後でうんと甘やかしてあげよう
そうこの強がりな人を見て強く思った
「はい。実は今、カレー作ってるんです」
「わぁ…っ、楽しみだな。俺も手伝うよ」
二人でリビングに向かうと翔と千紘さんが相変わらずのやりとりを繰り広げていて思わず顔を見合わせて笑ってしまった
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