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「すみませーん」
ドアを開けると一人の白衣を身につけたおばさんがゆるりと振り返った
「あらあら、どうしたの?とりあえずそこに座ってちょうだい」
安心するような声色でそう言われて、善さんだけを椅子に座らせる
口の横が殴られて切れているのは見て分かるし、外から見ただけでは転んだ様子もないから殴られたという事も分かるだろう
「他に何処か怪我してる?」
何故か俺に向かってそう聞く先生に違和感を覚えるが、とりあえず答える
「壁に肩が強く当たって…」
きっと、当てられて、なんていう言葉は善さんが嫌がる
優しすぎるこの人はどんな奴のことだって庇おうとするから
「そう…ちょっと肩出せる?」
「……はい」
善さんはそう言ってボタンを二、三個外し、当てられたであろう方の肩を出した
「……そっちじゃないでしょう?逆よ」
全てを見抜くように善さんに向かってそう、言葉を放ち善さんは苦笑いを零しながらさっきとは逆の肩を出した
「………っ」
「大丈夫だよ。見かけより痛くないし」
そこはさっきぶつけたばかりなのに赤く腫れていて、白い肌には目立ち過ぎていた
「皮膚が薄いから痣になりやすいのね。
でも、打ち所が悪かったりしたらどうなるか分からないんだから少しは気を付けなさいよ?」
穏やかに、でも心配そうに微笑んだ先生はなんだか近所のおばさんみたいだ。
それも家族のように振舞ってくれるタイプの
「…あの、善さんと先生って知り合いなんですか?」
初対面とは思えないほど先生はよく善さんのことを知っているし、
善さんも打ち解けているから知り合いなんじゃないかと思った
「んー、と…知り合いっていうか……」
珍しく言葉を濁した善さんに先生は呆れたように笑ってから、代わりに答えるように声を出した
「体調を崩しやすいからよく休みに来るのよ。
特に夏なんかはよく見かけたわね」
夏…ということは、もう俺とは付き合っていた訳で
「何で言ってくれなかったんですか、具合悪いのとか」
「あはは、そんな言うほど悪かった訳じゃないから大丈夫だよ」
先生は奥からガーゼが入った瓶を取り出して、ピンセットでそれを掴み消毒液を垂らす
そして、それを善さんの口の端の傷跡につけた
「あら、倒れてから運ばれてきた事もあったじゃない。嘘は良くないわよ」
「い………っ」
消毒液が染みたのだろう、小さく声を漏らした。
普段なら可哀想だと思うかもしれないが、今は言ってくれなかった事に対して怒りを覚えている
「あ、あの…爽太君?」
「はい。何ですか?」
「ううん。何でもない、ありません」
善さんの敬語は聞きなれず、つい笑ってしまいそうになった
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