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「………ねぇ、怒ってる?」
保健室で肩に湿布を貼って貰った後に、今は大学の空き教室に二人でいるところだ
「まぁ、多少」
善さんが俺に言わなかったのは、俺が頼りないとか思ってるんじゃなくってただ本当に心配をかけたくなかっただけだと思う
でも、だからって倒れていることを知らされなかったのはなんだか癪だ
「……俺は善さんの全てを聞き出したい訳じゃない。そりゃ知れることなら全てでも知りたいですけど。
でも、人には知られたくないことの一つや二つは誰にだってあるだろうし、その事は仕方がないと思ってます」
俺が言葉を続けると善さんはやや下を向きながら、うんうん、と相槌を打った
「それなのに、こうして話さなかった事を怒っているのは善さんが言いたくない事を話さなかったんじゃなくて、俺に対する遠慮だったからです」
善さんは顔をぱっ、と上げて見たその顔は
何とも言えない複雑な顔だった
「心配かける、とか迷惑だとか、そんなのは善さんが気にしても意味ないです。
だって、俺の気持ちは善さんの気持ちとは違うから。
だから善さんにとっては迷惑だって思うことも、俺からしたら迷惑じゃないんです」
「爽太君……」
愛情に疎い善さんには何度だってこうして伝える
それも別に、面倒だとか思わない。
「だって俺善さんのこと大好きですもん」
綺麗な黒がユラユラと揺れて、ポロリと雫が落ちた
それを指ですくうけど、追いつかない
「大好きだから、どんな事を言われても出来る事なら力になりたいし解決してあげたいって思いますよ。
もし逆の立場なら、善さんもそう思ってくれます……よね?」
自分で言っておいて最後の最後で不安になって、つい疑問形になってしまう
それに善さんが小さく笑って涙をすくっていた俺の指に軽くキスをした
その動作がおとぎ話に出てくる王子のようで。
でもそれも、違和感を抱かせないくらい自然でとことん狡い人だと思う
「うん。もちろん。
俺も爽太君が大好きだから、だからこそこうして嫌われないか、面倒に思われないかってつい隠しちゃうんだ。…ごめんね」
嫌いになる訳ない、そう言っても善さんの不安は完全には拭い切れないだろう
でも、そうやって不安になるたびにこうして想いを伝え合えばいいんだ
「謝らないで、善さん。
もしもまた、俺の気持ちが分からなくなった時があれば何度でも聞いてください。
俺が伝える事で善さんの不安が一瞬でも消えるんなら何回だって言いますから」
そう言うと善さんは、ほんのり頬を染めた
白い肌は少しの変化でも見て分かってしまい、つい笑った
「あー、何で笑ってるの?」
「秘密です」
いつもとは逆の立場になったようで少し優越感。
正に形成逆転だ
「じゃあ、今不安だから愛してるって言って欲しいな」
「はい⁉︎」
意地悪な笑みを浮かべる善さんは、確信犯だ
それでも自分で言ったのに、前言撤回なんて出来るはずもなく…
「ほら、聞かせて」
「……どんな羞恥プレイですか」
善さんは俺をじーっと見つめて、その目で射抜くような視線だ
それはそれは綺麗な顔が目の前にある訳で、ただ言葉を発するだけなのになんだかとんでもない事をさせられているような気分になる
「あ……愛してます」
自分でも分かるくらい真っ赤になりながらそう言うと、善さんは満足そうに微笑んだ
「うん。俺も愛してるよ」
「………っ、ん……!」
肩に手を置かれて少し背伸びした善さんが、キスをする
それは少し強引で、でもすごく優しい
「あはは、可愛い」
「…………」
やっぱり善さんは一枚上手だ。
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