アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
監獄のカーニバル 4
-
「…ッ!?」
食人鬼のキスは、優しいものだった。
唇は冷たく、よりかたちを感じる。
その冷たさとは裏腹に、ねじ込まれた舌はあたたかい。
男は自分が空腹で人肉を死ぬほど欲しがっていたことなど忘れて、少年を愛撫した
唇が離れて、ふたりは目を合わせる。
男は少年を哀しそうに見つめた。
少年は男から愛を感じていた。
この人は、自分を大切に思ってくれている。
そう感じることすら出来るような甘いものだった。
少年は涙を流して男の縮れた髪を撫でた。
もうこわくない。
いずれこの人は監獄に入れられ、もしかしたら死刑になるかもしれない。
いまその男が体温を持ってここにいることが奇跡に感じて、少年は男を抱擁した。
男もまた涙を流した。
人間は、こんなにも暖かいものなのか。
死んだ人間にしか触れたことのない食人鬼は、自分がもうすぐ逮捕されて死刑になることをわかっていた。
…もうすぐ死ぬっていうのに。
こんな時に君に出会っちまうなんてな…。
「…僕は…」
男は、はじめて少年にちゃんと口を開いた。
「あの時から…」
「…」
バス停で少年に話しかけられた時から。
「君を食べたいと、思っていたんだ…」
「…」
少年は黙って男の話を聞いた。
「だけど…」
「…」
「…こんなに愛しているのに…食べられるわけ、ないじゃないか…」
苦しそうに、一言ひとこと紡ぎあげた。
「すまない…怖がらせて、しまって」
「………よ…」
「…え?」
少年は不敵な笑みを浮かべて言った。
「食べてくださいよ…僕を。」
ふたりは汚れたアスファルトにも構わず、倒れ込んだ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 7