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―――
藤堂さんのマンションへと帰ってきたはいいが、藤堂さんはかなり不機嫌。
それもそうだ。
俺の癌という病気がバレて手術を受けろと言われたのに、俺はそれを拒否した。
拒否できるような立場でもないのに。
俺はもう藤堂さんのモノだから俺を生かすも殺すも藤堂さん次第。
「もう一度聞く。何故だ」
いきなり低い声がして藤堂さんの方を見ると、眉間にシワを寄せそれはそれは険しい顔をしている。
「もしちゃんした理由があるのならばお前の意思を尊重してやってもいい。ただ、お前はもう俺のモノだ。それを忘れるな。…で、そこまで嫌がる理由はなんだ」
しっくりくる理由なんてない。
ただ、存在意義を感じられないだけ。生きる意味が分からないだけ。
じゃあ、逆に…
「俺を生かそうとする理由はなんですか?」
人身売買や臓器売買が出来なくなるから?
それ以外に俺に利用価値はない。
一度は父さんが命をかけて俺を人身売買と臓器売買の危機から守ってくれたのに、やっぱり俺はそういう運命だったみたいだ。
ごめん、父さん……
けれど、返ってきた言葉は予想とは違った。
「死にたい理由はなんだ、と聞いている」
質問に質問で返すなということか。
俺なんてただのモノだから『売り物にならなくなるからだ』と即答されると思っていた。
「お金、ないし…」
「俺が出す」
「っ…、藤堂さんの役に立てそうにないし…」
「端からそんなこと期待していない」
「俺は…生きる価値なんて、生きる意味なんて、ない」
「ふっ、理由はそれか。そんなくだらない理由で生きることを諦めるのか」
この人は俺の事をほとんど知らない。
俺にとってはくだらないことなんかじゃない。
もし命が延びたって、これから1人ぼっちで生きていかなきゃいけない。
親もない。お金もない。仕事もない。
夢もなければ趣味もない。
「生きる意味なんざ元々あるものじゃない。自分で作るもんだろう。今のお前の役目を忘れたか」
俺の役目…
与えてもらった役目、それは洗濯に掃除。簡単に言うと家事。
でもそんなの俺でなくても誰だって出来る。
そういうのを仕事にしている人だっているわけだし。お金さえ出せばプロがこなしてくれる事。
「俺はお前にこの役目を任せている。お前に、やってほしいからだ。役目を放り出すのか。お前はそんないい加減な人間なのか」
「っ、ちが…っ、違うっ!!」
この時藤堂さんは俺の過去も調べて知った上で、似た境遇の自分と重ねて俺を見ていた、なんて俺が知るわけもなくて。
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