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―――
ねぇ父さん、信じてもいいかな?この人の言う通り生を延ばしても、もう1人ぼっちにはならないかな?
「竜、俺を信じろ」
こちらを見る真っ直ぐな目。
「お前を1人にはしない」
本当に?本当に信じてもいい?
堪えきれず溢れた涙が頬を伝っていく。
ふと前から差し出されたのは白いハンカチ。差し出したのは…まさかの豊島さん?
冷徹そうなのに優しい所もあるんだ…この人。
ありがたく受け取ったハンカチで涙を拭いて顔を上げれば、豊島さんとバッチリ目が合ってしまった。
睨まれているような気がするんだけど、もしかしてさっきの口に出ちゃってた?
「手術、受けるな?」
「え、あ……はい」
冷ややかな目と有無を言わさない口調、もう「はい」と言うしかない状況にされてしまって。
やっぱりこの人怖い。ヤクザだから威圧感は付き物なんだけど、それだけじゃない。藤堂さんとは違う。
冷たすぎるオーラを放ち、まるで冷凍庫。その冷凍庫に閉じ込められた気分だ。
「若も甘すぎるんですよ。本人の同意拒否関係なく進めれば良かったものを」
「それは俺の意に反する。まぁ結果、同意を得たんだからいいじゃないか」
な?と頭の上に手が乗ってワシャワシャと髪を乱されて、心にしまわれていた記憶が思い出されていく。
幼き頃、転んで膝に怪我をした時、泣きながらも1人で立ち上がった俺の頭に大きくて優しい手が乗せられ、ワシャワシャと髪を乱した。
少し低い声でいつも微笑んでいて優しく俺を見守ってくれていた太陽のような人。
今はもういない……
「父さんっーー」
更に溢れだした涙は止まることを知らない。
2人がツラそうに眉間に皺を寄せてこちらを見ていたなんて、ぼやけた視界には映らない。
「ふっ。今は泣け」
そう呟いて、まるで安心させるかのように背中を擦ってくれる優しい手。
その手に促されるままに藤堂さんに体を預けた。
こうやって優しく抱き締められたのなんていつぶりだっけ?何年も感じていない温もりが心地よくて、体の力が抜けていく。
「こいつは…白虎(ハクト)に似ている。あいつも頑固で我慢強いやつだった。そして可哀想なやつだった」
「若、竜くんは白虎さんとは別人ですよ」
「あぁ、分かっている。白虎は背ももう少し高かったし、顔もこいつみたいに可愛くはなかったな」
遠くで何か聞こえるけれど、何を言っているのかは分からない。
ゆらゆらと揺れる意識の中で見た夢で、父さんが笑って立っていた。
―父さんっ、俺も父さんの所へ行ってもいい?
そう言った瞬間父さんの顔が険しくなった。
―駄目だ。生きなさいっ
―なんでっ!
―俺が命懸けで守った命、諦めないでくれ。お前の楽しそうな姿を、俺はまだ見ていないんだぞ。これからきっと竜にも良い事が起きるよ
微笑みながら消えていく父さんは、向こうで楽しく過ごしているのだろうか。
俺だってもうそっちに行きたい。でも父さんが命を懸けて守ってくれた俺はまだ死ぬ時じゃないみたいだ。
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