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目が覚めると、座っていた革のシート…ではなく、ベッドの上にいた。
確か豊島さんに怒られて手術の件に了承しちゃって、車に揺られてそのまま寝てしまったんだ。
え、じゃあなんで俺はベッドで寝てるんだろう。まさか、藤堂さんが運んでくれた感じ?
キョロキョロと周りを見回しても部屋の中には俺しかいない。カーテンから射し込む光からして、まだ昼間っぽい。
昼寝をしたおかげで、やけにスッキリした体を起こし寝室を出た。リビングにはやっぱり藤堂さんがいて。
「起きたか。昼食べてないから腹減っただろ。何が食べたい?」
「え、や…何でもっ」
「ふっ、まぁいい。支度しろ」
支度といっても顔を洗い歯を磨き上着を羽織るだけのこと。ものの10分で終わり、先に玄関近くの壁に凭れて俺を待っていた藤堂さんに駆け寄る。
初めて足を踏み入れた地下駐車場は、暗くて寒くてなんだか怖い。すごく不気味だ。
ズラーッと車が並んでいて、それも高級そうなものばかり。このマンションに住んでるのは皆金持ちなのか。
ピッピッとロック解除の音が聞こえて光った車は、誰もが知るであろう某外車の黒のSUV。
促され乗り込んだ助手席。車内は少し甘い落ち着く匂いで、上質な革のシートは座り心地が良い。
「シートベルトしとけよ。捕まる」
車なんて長らく乗っていないからシートベルトなんて概念はなかった。というか助手席なんて初めてだし。
ブオーンとエンジンがかかり動き出した車。
何故か無音の車内は落ち着かない。普通音楽とかあるよね?せめてラジオとか。
外車ってラジオ付いてないの?そんなわけないか。
気まずい、気まずすぎる。この雰囲気どうにかしないと。
「ヤクザの偉い人なのに自分で運転するんだ…」
あれこれ考えているうちに、ふと思ったことが勝手に口に出た。
「プライベートはな」
仕事は送迎付きだもんね。社長様だから当たり前か。
なんて考えていたら遠目にパトカーの姿を見つけた。
「あ、パトカーだ!逃げないと!」
「ふっ、俺は何も悪いことはしてないぞ。まぁほんの少し速度は越えているか」
そう言って笑って、片手でステアリングを回す姿は悔しいけどカッコいい。
普通ならこの一瞬で惚れてしまうんだろう。女だったら、だけど。
残念ながら俺は男だから、惚れるなんて馬鹿なことはない。
「あ、そういえば…外車なのに運転席は右って…」
普通外車ってハンドルは左についてるよね?
いくら車に疎い俺でもそれくらいは知ってる。
なのにこの車は違う。実は国産車でマークだけつけて外車っぽくしてるとか?なんて。違うか。
「左は不便でな。外車といっても両方あって選べる」
初めて知った情報に、へぇーと納得していると、建物ばかりだった景色が急に変わり、綺麗な海になった。
「わぁー、すごい綺麗っ」
海面は太陽に照らされキラキラと光り、遠くに船も浮かんでいて、その上は鳥が飛んでいる。
まだ寒いこの時期に窓を開けるなんてことも出来ず、流れる景色を窓越しに見ることしかできない。
「また連れてきてやる」
ほんとに?嘘じゃない?ペットの俺を?
なんでペットの俺にこんなに良くしてくれるんだろうか。
見ず知らずの他人に。貧乏で子供で不細工な俺に。
食事だって某お弁当屋さんの500円前後のお弁当でも俺にとっては贅沢なのに、それよりもっともっと良いものを食べさせてくれて。
あ、でもペットは飽きたら捨てられるのかな。
人間である俺の場合は消されるんだろうか。
無言で頷いた俺はちゃんと笑えているだろうか。
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