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「察するに、俺か」
探偵かと思うほどの見事な推理力。
けれど、今それを発揮してくれなくていい。首肯くことは出来なくて反応に困ってしまう。
助けを求めるように向けた視線は、必然的に見上げる形になってしまって。
「潤んだ瞳で上目遣いか。狙ってやっているのか?だが、所詮夢だと言っただろう。現実にはならない。思っていること全てぶちまけてみろ」
ふっ、と軽く息を吐いて俺の言葉を待ってくれていて、恐る恐る言葉を紡ぐ。
声は小さいものの、今度はハッキリと。
「貴方に、銃で殺される夢を。額を、撃たれて…」
此所を、と額の中心を、夢で撃たれた所を押さえた左手に藤堂さんの右手が重なり困惑する。
「その夢が、リアルでっ…俺っ…」
やっぱりいつかこうやって殺されるんだ、と思ってしまいました。
その言葉は言えずに、その代わりに涙が溢れた。
「現実になることはないな。俺はお前を殺さない」
「邪魔になったらっ…」
流石に殺すよね?
「ならない。俺は気に入らない奴を連れて帰るほど変り者ではない」
それは俺を気に入ったということか。
でもっ…
「俺に利用価値なんてないしっ…何の役にも立たない」
同級生からモヤシと呼ばれていたくらいだから体格も良くないし力だってないから、ヤクザの世界に入れる人間ではない。
かといって勉強の成績だって並みで、パソコンも軽くしか出来ないから仕事も手伝えそうにない。
あるのは高卒という誰にでもある最低限の学歴だけ。
「利用する気などない。お前が望まない限りはこの世界に入れる気もない。ただ普通に生活していればいい。それにお前はもう俺の役に立っている。ペットとして体を開いているだろう?」
違うか?とパジャマ越しに性器を触られ、恥ずかしくて顔が全身が熱くなる。
何も寝起きに下ネタをぶっこまなくても。
「美味い飯も作ってくれて家の事はしてくれている。それに俺の性欲をも満たしているんだから十分俺の役に立っている」
なに、この人。
下ネタぶっこんできて下品だと思っていたら、俺が役に立っているんだと励ましてくれて。
こんな良い所に住まわせてもらって良い物を食べさせてもらっている俺が、家事をするなんて当たり前なのに、寧ろそれしかしていないのに、まるで凄い事かのように言ってくれて。
ネガティブにしか考えられない沈んだ心を掬い上げてくれる。
いとも簡単に俺の涙腺を崩壊させる。
「さてと、もう一眠りするか」
時刻はまだ午前2時を少し回った頃で、起きるには早すぎる。
けれど悪夢を見た後では脳が興奮してか眠気なんて全然襲ってこない。
でも藤堂さんは仕事だよね。俺のせいでこんな夜中に起こしてしまったんだ。
目を閉じて規則正しい呼吸を繰り返し、寝たフリを決め込む。あわよくばこのまま眠りたい。
俺が眠っていると分かれば安心して眠れるだろう。
それなのに。
「眠れないのか?」
優しくかけられる声にびくつく。
上手く寝たフリが出来ていると思っていたのに、なんで分かったのか。
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