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などと思っていたのが昨日のこと。
いつものごとく残業帰りした俺は、今度こそスーパーで甘いものを大量に買い占め気分が良かった。今日こそ、録画したバラエティでも見ながら甘いものに囲まれようと考えていて幸せだった。それで昨日のことは忘れようと思っていたのに。
「あっ…理一さん! お疲れ様です!」
お疲れ様ですはお前だよ。なんで俺のマンションの前にいるんだストーカー。
「………今何時だと思ってる?」
「えっと…十一時ですね」
「何時からここにいたんだ?」
「部活終わりだから、七時くらいからいました」
おいおい、嘘だろ……四時間前じゃねぇか……。
案の定、風見くんは少し疲れたような顔で笑う。この精神力はどこからきてるのか。
「さっさと帰れ。親に心配かけ……」
「昨日言い忘れてましたけど…俺、親いないんです」
「………」
適当に追い払うつもりが、とんでもない話を引き出してしまったらしい。
いない…とは、家にいないというだけか。それとも物理的に……。
それは、風見くんの顔を見るだけですぐにわかった。何かを我慢したような笑みに、こっちまで胸が痛くなる。
「中学生の時に、事故で……だから、一人暮らししてるんです。親戚はみんな遠方だし、あんまり仲良くなくて……」
「……ふうん」
「だから、嬉しかったんです。あの時……」
「……あの時?」
あ、もしかして、俺と会ったことがある日のことだろうか。
申し訳ないがこちらは微塵も覚えていないが……。
すると、風見くんの背後からマンションの隣人がやって来るのが見えた。同い年のOLさん。何気狙っていたので、とりあえず頭を下げると、あっちも下げてくれた。
「あの時から、あなたが好きなんです…!」
「待っ、ちょっ……!」
なんてタイミングで愛囁いてくれたんだテメェー!!
案の定OLさんは、そんな顔できるのかというほど風見くんをガン見すると、なぜか俺にウィンクをしてマンションへ入って行ってしまった。
…ああ、終わった。絶対ホモだと思われた。つーかホモだとしても未成年とか犯罪なんじゃないの?いいんですか?
「うぁー、もう……お前……なんなのまじで…」
「……お願いします。せっかくあなたと話せる関係になったのに、ここで終わらせたくないんです」
「……じゃあ、友達にでもなれってことか?」
「友達、からでも……」
から、とつけられてしまった。
正直マジで、こんな恋愛はこいつにとって良くない。断ろう…と思っていたが、こう泣きそうな顔をされるとどうも弱い。
こいつとキス…とか、セッ………とかは考えられないが、まぁ…友達くらいなら。
「ああ…わかった。今日から俺とお前は友達だ」
「えっ……いいんですか!?」
「じゃねぇとまたストーカーすんだろ。マンションの住人に変な噂たてられても困るしな…」
もう手遅れな気もするが…。
「んじゃ、そういうことで…」
「れ、連絡先!」
「え? ああ……そうだな。ライン持ってる?」
また電話番号とメールアドレスを渡そうとしてきた風見くんを制し、今流行りのアプリを起動する。やっぱり、こっちの方が何かと便利だし。
風見くんは、拙い動きで携帯を取り出すと、なんとか連絡先を交換することができた。
チラッと風見くんのアイコンを見てみると、どうやら友達と騒いでいる写真のようだ。こいつ、ちゃんと友達いたんだな。
「よし、これでいいな」
「ありがとう、ございます……」
「ああ………って、泣くなよ!?」
顔を上げると、ボロボロと涙を流しながら携帯を抱きしめる風見くんの姿にギョッとする。情緒不安定か。
思わずその頭に手をやり、ポンポンと叩いてやると、風見くんに素早くその手を取られる。
しかし、今度は引き寄せられるわけでもなく、チュ、と俺の手に唇が落とされた。
「っえ………?」
「好きです、理一さん。……明日も会いに行ってもいいですか?」
風見くんは、俺の指にするりと指を絡め、それからゆっくりと手を離す。
「え……あぁ………」
空気の抜けたような生返事をすると、風見くんはまた嬉しそうに笑って、背を向けた。
バクバクと、耳まで鼓動が聞こえてくる。うるさい、これは、ちょっと心臓がびっくりしただけだ。あいつ、ガキのくせにキザなことしやがる。王子気取りか。
「……俺はお姫様じゃねーっつーの」
触られた箇所が熱を持ち、それが煩わしくて手をぎゅっと握りしめた。
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