アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
14
-
一口口に入れると広がるバニラアイスに、思わず頬が緩む。これだけで仕事の疲れも吹っ飛ぶってもんだ。
「さっきの話ですけど…」
「んー?」
さっきの話…ああ、俺の苦い過去の話ね。
風見くんは手に持ったアイスを開けもせずに、俺を真っ直ぐ見つめる。
「なんで俺に話したんですか?」
急に、部屋の温度が低くなったような気がした。
「え……なんでって…話の流れ…で?」
「理一さん、わかってます? 俺、あなたのこと好きなんですよ」
「あ…………うん」
……そうだ、すっかり忘れてた。
つい男友達とか後輩に話す感じで、恋愛トークしちまった。
ガヤガヤと、テレビに映る芸人たちが笑う。
その音が余計に空気を重くさせていた。
「で、でもさぁ…俺ら、いい友人になれるとも思うよ? ほら、お前は俺を親代わりに思ってくれればいいし、俺は……」
退屈な毎日を、忘れられる…し……。
「…………俺は?」
……なんだそれ、最低じゃねぇか…。
「えっと……すまん………」
…もしかして、俺はこいつの友人でいるべきじゃないんじゃないか?
昨日、無理にでも断っていれば、こんな中途半端なことはしなかった。風見くんの気持ちを、どっかで「おもしろい」と思って、楽しんでいた。
申し訳なさに俯いてしまうと、ふと風見くんが微笑む。
「……別に、いいですよ。初めから、貴方が本気にしてくれるなんて思ってませんでしたから」
「…え?」
「だから、」
アイスを持った腕を取られ、グイと引き寄せられる。両手がふさがっていたせいで反応が遅れ、唇に柔らかいものが押し付けられた。
「んッ…ふ……っ……!」
油断した。そんなことを思いながら、力一杯風見くんの胸を押す。
しかし、それは全く効果がないようで、顔を背けようとすると風見くんの手に頬を包まれる。
「っン、ンン…っは、…何して……」
「……バニラの味」
風見くんはほんの少し顔を離すと、小さく笑って舌で唇を舐める。
その生意気な態度に、前みたいに怒ってやろうかと思った。でも、腰が抜けてベッドから立てない。
……こいつ、やっぱり小悪魔だろ。
「お前っ…ほんとに訴えるぞ……」
「ハハッ…俺、負ける自信ありません」
「……確かに」
未成年を連れ込んだのは俺だし…世間から変な目で見られるのは俺だろうな。
「……怒んないんですか?」
「…いや、なんか……怒る気力もないっていうか…」
「……そんなに俺のキス、良かったんだ」
「ハァ!? ちげぇよ、聞こえてんだよ!!」
「聞こえるように言ったんです。っていうか……」
風見くんは、ふと視線を右下へずらす。
つられてそちらを向くと、手に持っていたアイスがいつの間にか、俺の腕とソファに溢れてしまっていた。
「うわっ…! 嘘だろ…まだ全部食べてねぇのに…! お前のせいだぞ!!」
「すいません。じゃあ…」
風見くんは掴んだままの俺の腕を引き寄せたかと思うと、舌を出し腕に溢れたアイスを舐めとる。
その途端にゾワゾワッと駆け巡る気持ち悪さに、やめろと叫びながら風見くんの肩を押した。
しかし案の定、効果なし。
「ン……美味しいです」
「っっ………変態野郎だな」
「腕舐めただけで?」
おかしい。どうもおかしい。
風見くんは、俺が元カノの話をしてから頭のネジがぶっ飛んでしまったらしい。
「理一さんにもあげます」
「おい、いいかげんっ……!!」
…いや、違う。
「ンッ、ふ……っんぅ、…!」
「っはぁ、ン……理一さん……」
こいつは、必死なんだ。
俺に意識してもらおうと。友人ではなく、対象として見てもらおうと。
無理やりにでも爪痕を残そうと思ってるんだ。別れ際に彼女へ土下座した、俺みたいに。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 15