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しばらくして家の掃除も終わり幸仁と遊んでいるうちに、もうすぐ帰らなければいけない時間になったと幸仁が悲しそうな声で俺の手を取った。
「こら、泣かないの」
「帰りたくないです……」
「またいつでも会えるよ」
「明日も来ていい?」
「うん」
こんな俺と遊んでいて何が楽しいのか分からないけれど、ここまで帰りたくないと言われると嫌な気はしない、でも家に帰ったら嫌なことでもあるんじゃないかとちょっと心配になる。
しかし幸仁の家は皆仲がいいと以前言っていたから酷い事をされているわけではないようだ。
「幸仁は、何で俺と一緒にいるの?」
「へ……嫌でした…?」
「え、違う違う、ほら泣かない」
幸仁の頭を撫でていると幸仁は俺の腕の中に入って来てどうしていいのか分からないからとりあえず俺は幸仁を抱きしめた。
他の家の子で、しかも小学生を抱きしめるって俺は今、何をしてるんだ。
「俺、あきまささんが嫌なら無理に来ないですよ…?」
「嫌じゃないよ」
「ほんと?」
「俺が嘘つくと思う?」
「へへ」
あったかい、誰かに抱きしめられた事なんて1回もないのに自分が誰かを抱きしめるなんて…。
暗くなると危ないから、幸仁を離して俺は玄関まで見送りに行く。と言っても俺は幸仁に誘導されてるんだけど。
「1人で大丈夫…?俺、外出れないけど」
「大丈夫です!まだ明るいですし!」
「母さん呼ぼうか?」
「走って帰ります!!」
そういえば俺は幸仁の家を知らない。まぁ知らなくて当然だけど、俺の家から近いのか遠いのかさえもわからない。
もし、すごく遠かったらどうしよう。子供を1人で歩かせるって結構危ないよな…、最近なにかとぶっそうだし。
「あきまささん!」
「ぇ、あ、何?」
幸仁は俺の手を取って自分の頬をすり寄せる、子供だからなのか肌がすごくスベスベだ。
「幸仁?」
「俺!ずっとあきまささんと一緒です!」
「へ?」
「明日もまた来ますね!お邪魔しました!」
「え、ちょ」
そう言って幸仁は家を出て行った。全然意味が分からなかったけど幸仁の体温がまだほのかに残る自分の掌がなんだかとても名残惜しい…って思う俺って変なのかな。
「幸仁くん帰ったの?」
「あ、うん」
「あら、送っていったのに」
母さんなら絶対言うと思った…、でも幸仁はきっと遠慮してるんだろうな。
子供のくせしてしっかりしてるんだな、俺だったら人に頼るのに。まぁ、そもそも俺は人に頼らないと生きていけないんだけど…。
自分の部屋に戻れば、今までどこに何があるなんて分からなかったのに自然とさっき教えられたものが記憶にあって、俺は教えて貰ったところを手探りでまた確認した。
そーいえば、ここのスペースは点字の本だよな…このガサガサの手触り…俺が初めて点字を勉強した本だ。
「…...ほんと変なやつ」
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