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熱
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バタンッ
実習室の扉を閉め、歩き出す。
今日は金曜日。午後は授業がない。
仕込みは完了したし、
後は明日早朝に来るだけ。
「ケホッ…。」
俺は昨日から咳が出ていて、
頭が痛いから早く寮に帰りたかった。
それで大人しく寝てよう。
パタパタと廊下の向かいから走ってくる音。
なんとなく止まる。なんとなく。
そのなんとなくは当たった。
走ってきたのはエリックだった。
「シュン!久しぶり!」
「久しぶり」
「今日は朝から会ってないね」
悲しそうに言うエリックを睨む。
朝から会っていない?
違う。俺は会った。お前を見たよ?
だけど、声をかけなかった。
かけれなかったから。
朝の光景を思いだしズキッと痛む胸と、
何故か少し泣きそうになる。
「エリック、用がないならもう行っていいか?」
午後になるにつれて頭がガンガンと
ハンマーで殴られている感覚になってきた。
「シュン?どうしたの?今日変じゃない…?」
手を伸ばしてきたエリックを
パシッと軽く払いのける
エリックに、心配かけたくない。
誰にも心配かけたくないし、甘えたくない。
「別に、なんでもないから…じゃあな。」
クルリとエリックに背を向け歩き出そうとした。
その瞬間、ガシッと腕が捕まれ、エリックの顔が
目の前にあり、コンッと額同士がぶつる。
「…やっぱり。シュン。熱あるよ?」
「ない…」
「ある!」
何故かイラッときて、
エリックの胸を押しエリックから離れる。
「いいから!俺に構うなよ…!」
風邪のせいか、いつもよりも感情の起伏が
激しかったし、大声を出したから頭に響く。
それでもエリックは、呆れることも、
怒ってどこかに行くこともなかった。
エリックは俺を優しく抱き締めると、
ゆっくり背中をさすりながらポンポンと
頭を撫でてきた。
「よしよし、シュン。」
ばかにすんなよ。
そう言って離れたいけれど離れるのすらダルい。
こいつの優しさに泣きたくなる。
それでも相変わらず頭は痛いし、
昨日から何も食べていないはずなのに
胃の中の物が逆流してきそうな感じがする。
「なんなんだよお前…」
「ん~…シュンきっと疲れてるんだよ。
最近頑張ってたもんね。」
「シュン、もっと俺に寄りかかりな?」
エリックの匂いに包まれ、
今度こそ本当に泣きそうになる。
俺…こんなに弱かったっけ。
「頭痛い…喉も昨日から痛いし、ダルい。
気持ち悪い…」
「うんうん。寮まで歩いて帰れる?」
「歩ける…。」
エリックは「いい子」と呟くと、
俺の腰を抱きゆっくり歩き出した。
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