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才能…?
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それから季節はどんどん巡り、
田舎町には雪が降った。
相変わらずリーはたくさん勉強していたし、
俺にも英語を教えてくれた。
「春、おいで!」
リーに呼ばれ、厨房に行くと、
そこにはたくさんのチョコレート…
(その頃の俺は『ボンボンショコラ』の
存在をまだ知らなかった。)
リーは俺に好きなのを試食していいといった。
この時正直、躊躇した。
この前じいちゃんにチョコレートを
食べさせてもらった後に、
じいちゃんやリーが作ったチョコレートを
食べちゃダメ、
とじいちゃんから言われていたから、
久しぶりのチョコレートはすごく嬉しかった
俺ははじめに手前のピンクに白くハートが
書かれていたチョコレートを手にとった。
「ラズベリーだ…でもラズベリーの酸味が強くて、
ミルクチョコレートとケンカしてる…」
「…!」
「ビターにするか…ハチミツを混ぜれば
ラズベリーの甘味が増して、
ミルクとケンカしないよ!」
くるりと振り返ると、目を見開いて口元を
押さえるリーがいた。 リーは、優しい笑顔で、
「他はどう?」と聞いてきたから、
奥の黄色いチョコレートを食べた
「マンゴーソース?すごくおいしいけど…
後味が残る。マンゴーソースの甘さを
控えめにするのはどう?」
リーは嬉しそうに喜びながら首を振り、
フワリと俺を抱き上げた
「セ・ビアン!春、すごい!
君にはやっぱり才能があるんだ! 」
「リー⁉ちょ、ちょっと…!」
パタパタと足をばたつかせると、
リーはクルッと一回転した後、俺を降ろした。
才能?才能ってなんのことだろう?
「どうしたどうした?」
騒ぎを聞き付けて店からじいちゃんが
厨房に顔を出す。リーは嬉しそうに
じいちゃんに駆け寄り、さっきのことを説明した。
リーが話すうちにじいちゃんは
段々と顔が暗くなり、元気がなくなっていった。
「…先生?」
「…リー、わしがこの子の才能に
気づいていないと思ったか?」
溜め息をつき、悲しそうに俺の頭を撫でる
じいちゃんと、気まずそうに唇を噛むリーの
様子に、俺はすごく悪いことをして
しまった後のような気持ちになった。
その後、2人が何か難しい話を
していたような気がしたけれど、
この時の俺は全く理解できない話だった。
口の中はチョコレートの苦さだけが残っていた。
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