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ショコラティエール
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──そして1時間後、俺は無事買い物を終え、
エリックの家に戻ることができた。
ゼン曰く、裏口から出れば住宅街、
そして池があるけれど俺が出たのは
正面玄関だったから、俺は道に迷ったらしい。
実際かなり遠回りをして
スーパーにつくことができた。
俺は、裏口から入り、キッチンに戻った。
キッチンにはまだエリックのお母さんがいて、
本を読んでいた。
「お帰りなさい。随分遅かったわね?」
「すみません、えと、歩くのが遅くて」
さすがに道に迷ったなんて言えない
それでもエリックのお母さんは「あらあら」と
クスクスと小さく笑った。
もしかしたら…道に迷ったことがバレてる?
「それじゃあ、お茶の準備をしましょ…ケホッ,ケホ」
そう言いかけ突然咳き込み、口元を手で押さえる
エリックのお母さんに駆け寄り、背中を擦る。
「ありがとう…コホッ」
「休んでいてください。
おれっ…わ私が、やります」
「そんな!お客様よ?悪いわ…」
「いえ、」そう言い、持ってきたバッグから
小さく折り畳まれた黒のエプロンを取り出す。
「これでも製菓学校出身です。
とびきりの紅茶をお淹れします」
俺が少しだけ笑うと、エリックのお母さんは
「そう?じゃあ、お願いするわ。
ショコラティエさん」と言い微笑んだ。
買ってきたのはエリックのお母さんの
要望であったダージリン。
世界的にも有名な茶葉だ。
香りがよく、「紅茶のシャンパン」とも言われる。
…実のところ俺は、対してお茶に興味はなかった。
つい最近だ。
お茶のことを一通りわかるようになったのは。
「──正しい紅茶のいれ方にはコツがあるんだよ」
そう…これはエリックの受け売りだ。
エリックはどんなお茶でも淹れるのが上手い。
高校1年の時にティーコンシェルジェの講座を
取っていたから、らしい。
とりあえず、エリックの教わった
通りにやってみるか。
お湯を沸かそうと、蛇口をひねると、
後ろからエリックのお母さんの咳が聞こえた。
「あの…休んでいて大丈夫ですよ?
できたら、お呼びします」
「ケホッ…そうしてもらえる?
本当にありがとう…」
エリックのお母さんはそう言うとキッチンを
後にした。やっぱりまだ、
体調が悪かったのだろう。しかもここは寒いし、
暖かい場所で休んでいた方が絶対いい
廊下で少し、誰かが喋っている声が聞こえた。
あまり気にせず、お湯を沸かしている間に
さっき買ってきたチョコレートをテーブルに出し、
冷蔵庫…勝手に開けるのは気が引けたけれど、
バニラアイスをしまった。
ふと、思った。さっきのエリックのお母さんの
言葉。「じゃあ、お願いするわ。
ショコラティエさん」
ショコラティエ…?
ショコラティエは、フランス語だ。
そして、[男性]のチョコレート職人を指す。
あれ…?
今の俺は、女の見た目はず
いや、もしかしたら専門用語を
知らないだけかもしれない。
「…違う」
だったら、フランス語で女性チョコレート職人
を表す「ショコラティエール」と言うはずだ。
間違えるはずがない。
だってエリックのお母さんはフランス人なのだから
まさか…!
そう考え付いたと同時に
キッチンの入り口から声がした
「アナタッ!何してらっしゃるの⁉」
振り返ると、シャーロット嬢が、まるで俺が
殺人でもおかしたかのように物凄い剣幕で
指を指し、立っていた。
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