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選んだ、選んでしまった
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「まぁ…この話はいいよ別に。
だってしょうがないよな」
顔を上げた彼の困惑した表情を、
これから俺はさらに歪ませる
「春、君が選んだ選択肢なんだから。」
一瞬揺れる瞳
でも彼はまたすぐ俯いて
「わかってる」とだけ呟いた。
俺はその様子にクスリとまた微笑み、
手を顔の前で組む。
「ほら、ね…だから君は変わっちゃダメなんだよ。
忘れたら、渡辺真琴クンがかわいそうだからなぁ…」
「別に、可哀想だなんて…思ってない」
「じゃあ罪悪感?
…春は優しい子なんだろ?昔と変わらず…」
ほら、また無意識に目を伏せた。
俺の言葉一つ一つに翻弄されていく
春がたまらなく愛おしかった。
もう少しだけ、揺さぶろうかな…
「まぁ、それはさておき。
友達を捨ててまでフランスに来た理由は?」
「それは…!」
捨てた。
そう言いわれても春には笑うできる余地はない。
それに、俺はこの後の答えを知っている
知っているけど、あえて言わせたかった
その方が春の記憶にもまた鮮明に残る
そうして…春の心にも刻ませたかった。
誰のために、ここにいるのかを。
「リーに…リーに会いたくて、
ショコラティエを目指して、フランスまで来た…!」
口元が綻ぶのが抑えられない
「だって…俺が頑張れば、どんな形でも
会えるから、って…そう言ったのは、リーだろ…?」
泣きそうになりながらそう、言い切った春
今、春は俺のことしか考えてない。
だったら…この8年間は無駄じゃなかった
「……俺を、追いかけて来てくれるって
信じてたよ、春」
小さく、息を飲む春
それが、感激なのか、嬉しさからなのか
悲しさからなのか
わからない
でもね
「…8年前、連絡をあれ以来寄越さなかった
理由知りたいだろ?…教えるよ」
繋がっていなそうに見えて、繋がっている。
俺と春の話の…舞台で言えば一番盛り上がる場面?
なーんて…。
怪訝な表情のまま瞬きをする春とは裏腹に
眉一つ動かさず、俺は悠々とコーヒーを口に含む
「先生…君のおじいさんに
言われたんだ。『もう、これ以上春と
関わらないでほしい』ってね。」
驚き、目を見開く。
「どうして…?」
そう、聞くのなら…きっと
この子はまだ何もわかっていない。
そう、何も知らない…純粋無垢な子供なんだ
そんな君に、俺は笑顔で死刑宣告を告げる
「おじいさんはね、春に
ショコラティエになって欲しくなかったんだよ。」
…あぁ、綺麗な顔が台無しだな
でもまぁ、
絶望に落ちかけてるその表情も…
好きだよ、春
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