アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
白くはなれない
-
じいちゃんは…俺にショコラティエに
なって欲しくなかった……?
「…冗談だろ?」
冗談だと言って欲しかった
悪い、冗談だって。
けれどリーは、口元に笑みを浮かべながら
首を横に振り、俺を真っ直ぐに見た
「春…、春がこれから踏み込もうとしている
世界は甘くない。苦いよ、本当に。
春が作り上げるチョコレート達のように
美しくはないし、ドロドロで
嫉妬や妬みや腐敗だらけの汚い、
大人の世界なんだ。
わかる?」
恐ろしく冷ややかな瞳に見つめられ、
背中を冷や汗が伝う
…わかってる
そう、すぐには言えないってことは、
俺はどこかでパティシエの世界に
夢を見ていたのかもしれない
「…そんなとこ、春には知って
欲しくなかったんだろうな。」
ポツリと独り言のように窓の外を見ながら呟くリー。
「…リーは?リーは…その世界を知ったの?」
あ、愚問だった
言って後悔した。
そうわかったのは、あまりに、
リーが悲しそうに微笑んだから。
「………知ったよ、もう十分ってくらい
大人の汚い所を見てきた。
そんなとこばっかだから、
…俺はもう、白くはなれない。」
──春のようにね、
一瞬、ほんの一瞬だけ見えた、
リーの表情は…似ていた
最近のエリックが、俺を見る時の泣きそうな顔に。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
150 / 232