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失いたくない
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「俺は、裏切ったんだ。
自分の願望の為に友達とを…無くした」
そりゃそうだ。
ずっと仲良かった奴に、約束を破られた。
相当ショックを受けるはずだ。
この醜い話を聞いて、3人はどう思ったんだろう。
ゼンは…困った顔をしている
ルイは…今にも泣き出しそうだった
そして、俺にこんな話をさせた張本人は
無表情のまま、俯いていた
……アホか。
お前が聞いてきたんだろうが
だからだ
…覚悟無しに踏み込むから
「……ここまでフランスに来ることに
こだわった理由わかるか?リーに会うためだよ。
リーと同じ世界に立つため。
ワールド・パティスリ・アワードで勝つため。
俺は自分の利益ためなら周りを顧みない
冷酷で最低な奴になれるんだよ。」
そうだ、そうだった。
この半年間で変わったなんて、大間違い
俺は元からこう言う奴なんだ
リーに会うために、会いたいがために真琴を裏切った
世界で勝って、自分の実力を試したいだけに。
「だから…俺は中途半端な気持ちでここにいれない。アイツに示しがつかなくなる。勉強して、身に付けて…無駄じゃなかったって、自分を安心させたかった」
だから、忘れちゃいけない。
変わらない、変わっちゃいけないんだ
真琴のことをわすれてしまわないように
それでも…
この半年間のできごとが頭を過る
出会いは最悪で、勝手に
人の領域にズケズケ入り込んで来やがって…
昼休みは自然と集まっていた。
1人でどこかに行こうとしても、誰かしら
勝手に付いてくる。
4人でドイツに行った
ハロウィンはゼンが飴のお菓子を作ってた。
ルイは度々部屋を訪ねて来て、夜たくさん話をした。クリスマスはイギリスに行って…
隣には…………
俺は…独りではなかった
思い出したように、笑みが零れる。
…瞼も熱くなり、気を抜いたら…何かが
溢れて来そうだった
「はは…俺さ、楽しかったよ。お前らといるの。
ひねくれてるし、ゆるいし、無駄に優しい
奴らだったけど、嬉しかった。」
でも、それじゃダメなんだ
「お前らといればいるほど、幸せな気分になってく。
それが…怖い。怖くて、怖くて堪らなくなる。
お前らを傷つけたら、どうしようって。」
真琴みたいに
一緒にいればいるほど、一度亀裂が入った時の
傷はどんどん深くなっていくのを、俺は知っている
だから、そうなる前に距離を取った
…そうした方がいいと、リーに言われたから。
いつか離れることがあっても、苦しくないように
「……もう、俺は間違えたくない。
あの時みたいに。」
真琴みたいに、コイツらを失いたくない
俺は、ガタッと静かに席を立った。
ジャケットを肩にかけ、振り返らずに扉まで進む
減滅…しただろうな
こんな奴なんだよ、俺は
ああ、…それでも
首だけ振り返り、3人を見る
「…お前らにだけは知られたくなかったな」
パタン……
静かに閉まる重い重い扉は
俺たちの距離を閉ざしていった
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