アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
霧が、晴れる
-
震える足取りで、会場を出る
扉の近くで待っていたゼンと、ルイ
「シュン!お疲れさまぁ…!
結果はもうすぐ放送で出るってぇ……!」
俺に駆け寄り、軽く抱きしめた後
弱々しく微笑むルイ
「すごかった…シュンちゃん、
あんなにスピードよく手際の良い
シュンちゃんは初めて見た」
少し疲れたよう笑うゼンに、俺も力なく笑う
何をしても、もう、終わった
後は結果を待つだけだ
[───審査結果を、発表いたします]
よく通る女の人の声に、息を飲む
[一位……
イタリア代表チーム
ニコレッタ=サンティーニ、
ドナテーニ=サンティーニ]
……あぁ、とルイから漏れる息
いつもなら、納得のいくはずのない結果
けれど今日の俺は、何も感じず
ただ純粋にその結果を受け止めていた
残りは、一枠……
[第2位
フランス代表チーム
シュン=スガワラ、エリック=リホーウェン
……第3位、
…………以上の結果となりました
第2位以上のチームは、ワールド
大会進出資格があります]
シン…と、静まりかえる俺達
それとは反対にざわつく声
遠くで誰かの雄叫びのような声がするけど
あれはニコかもな。
「……った、やった!やったよ、シュンちゃん!」
「シュン!シュン!!すごいよぉ!!シュン!」
急に、飛び跳ね、喜ぶ2人
本当に、本当に嬉しそうだった。
そんな2人を見て俺は
その横で、力なく、床に膝をついてしまう
「シュン…!?」
心配したのか、急いで俺の横にしゃがみこむルイ
俺は…何故か手の震えが止まらなかった
「……俺、俺…もう、何も作れないかと思った。
けど、できた…できたんだよなッ…!!」
自分の、指を、手を、拳を握りしめる
怖かった
この2ヶ月間
チョコレートも、エリックに、対しても……
何もできなかった自分が
本当に怖かった
でも、もう、大丈夫…
じいちゃんが、教えてくれたから
エリックが、気づかせてくれたから
決して忘れてはいけないこと…
『大切な人のために、自分が何をしたいか』
わかったよ…ようやく
「…ありがとう、ルイ、ゼン……」
ここまで、一緒に来てくれて
そう言うと…勢いよく抱きついてくるルイ。
その顔は涙でグシャグシャだった
「よかったぁ…よかったよぅ…
シュンと、まだいれるんだねぇ〜…」
この大会で負けたら日本に帰るつもりでいた。
世界大会に進める…つまり、
まだフランスにいれるということ。
…そうだ、そのことを……覚えてたのか
知らず知らずのうちにルイも、ゼンも、
傷つけていたんだ…
「…おめでとう、シュンちゃん……
まだまだ一緒いにきゃいけないってこと?
ホントさすが、天才ショコラティエだヨねー」
相変わらず皮肉を言いながらも
便乗して、俺とルイに抱き付いてくるゼン。
その深緑の瞳には…薄っすらと涙が浮かんでいた
いつもは、こんなに近い距離、嫌だけど
今日は、何故か
この距離が、2人の温度が
心地良かった……
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
191 / 232