アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
side 黒尾鉄朗
試合が始まる少し前に入ってきた175センチほどの背丈の男
バレーボールをするにはいささか華奢なその骨格
女顔で童顔
烏野のベンチに座っている黒髪のハーフアップの人物を俺は見たことがある気がした
1セットが終わるか終わらないか位に急に心臓の辺りを掴み強く目を瞑って
泣き出しそうなその表情に見覚えがある気がした
なにやら両サイドのコーチと監督に言われもう一度コートに目をむける
今度は泣きそうな顔ではなく少し戸惑ったような顔をしていた
”俺はこいつを知っている”
そう確信めいた思いが俺を横切った
思い出したのは全試合が終わったころだ
中学最後の試合、敵の中心にいた人物
俺より一つした研磨と同い年の男
田所綾斗
話した事は一度もない
そのくらい、田所は孤高な人物だった
チームの中でも、中心人物のはずなのに孤立している
そんな印象の男だ
レシーブもブロックもアタックも
当時の中学では抜きん出ていて、俺も少し憧れた
次の年、研磨の応援に行った大会。
そこのチームは試合に出ていたのにそいつだけはどこにも居なかった
ベンチにも応援席にも、どこにも
それが今、ここにいる
思わず取った行動は相手を壁に押しやって逃げれなくする事。
それを烏野のリベロに制され俺は久しぶりに動揺した
「クロがあんな事するなんて珍しいね」
研磨にそう言われ俺は田所綾斗を掴んだ左手を見る
「ホントだよな」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 136