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「単刀直入に聞く」
岩ちゃんと呼ばれた人が口を開いた
「あれは岩泉」
「ありがとうございます」
隣にいた松川さんが小さい声で教えてくれたので小さい声でお礼をいう
「お前、影山になんでセットアップ教えないんだ?」
「えっとー。教えられる事がないからですかね」
「はぁー?ちょっとなに言ってるのさ!Uー15のキャプテンでセッターの田所綾斗が!なに?嫌味っ?」
岩泉さんと一緒にちゃぶ台を挟んで向かい側に座っていた及川さんが乗り出して俺を睨みつけてきた
「と言われましてもー」
理由はいろいろある。けど、それをこの初めて会う人たちに言うことだろうか・・・
「理由言うまで及川しつこいから、さっさと言った方がいいぞ」
松川さんが耳打ちしてくる
きっとこの人たちは俺が何か言うまでしつこく聞いてくるんだろうな
今日が駄目なら明日、明日が駄目なら明後日って具合に
腹をくくるしかないかー?
「はぁ、教えない理由を話せばいいんですね」
「あぁ」
それに岩泉さんが答えた
「理由は教えられる事がないからってのは本当なんです」
及川さんがさっきよりイラついた顔をする
それを岩泉さんが無言で止める
「まぁ聞いてください。俺のセットアップは俺のイメージ的にブロックとセットになってるんです」
全員が首を傾げた
まぁそうなるよな
「俺が得意だったのはセットアップではなくブロックで、相手のセットアップを読むのに長けてただけなんです」
「ごめん。言ってる意味がわかんない」
「俺も」
花巻さんが手を上げる
それに松川さんも同意した
「んーと、簡単に説明すると。ソフトブロックします→リベロの所にボールきます→トス上げます→ソフトブロックしますの繰り返しです」
「そんな事可能なのかよ」
「まぁ5割リベロの前に行けばいい方って感じですかね。後のは大体コート内に落ちるようにしてたので誰かは取れるかなーみたいな」
手の位置、飛ぶタイミング、角度、すべてを計算して飛ぶブロック。
ドシャットを決めるためではないゲスブロック
「俺は、影山みたいに特別バレーがうまい訳ではなかったので相手の攻撃を読んで、統計上相手がくると予想しているコースを読んでいただけなんです」
誰がそんなブロックを飛びたがる。こんな邪道なバレーを誰が好きになる
「だからブロックして、何度でも攻撃する必要性があった。俺は影山みたいな一発で決めれる技巧のできるセッターじゃなかったですから」
みんなが勘違いしている。俺のセットアップがすごいみたいに
けど、本当はそうじゃない。特別な技巧があった訳じゃない
特別に予測が上手いわけでもない
ただ、統計と計算。あとほんの少しの読み
俺が持っているのはそれだけだ
わざとブロックを抜かさせてまだ行けると勘違いさせた
失点すら計算していた
「と言うことです。もういいですかね」
もう、嫌なことまで思い出しそうだ
『あいつのバレーは気持ち悪い』
あぁ、聞きたくない
「聞いてもいいか?」
まっすぐに岩泉さんが見つめてくる
「なんでしょう」
「相手の攻撃はどうやって読んでいたんだ?」
「統計学に基づいた計算と予測と言った所でしょうか。当時の俺は、相手のデーターはすべて頭の中に入っていたんです。知りえること全てです。性格、得意コース、顔の仕草、身長、ジャンプの最高到達点。敵チーム丸々暗記していました。それも考えなくても出てくるくらいには」
「かー。俺には無理だわ」
岩泉さんは天井を見上げた
「俺もー」
そう言い松川さんはオレンジジュースを飲む
「ねぇ。それ、どれくらいで出来るようになったの?」
さっきとはまるで違う落ち着いた印象の及川さん
凄みを感じた
「体に染み付くまでには2年とちょっとですかねー」
そう言うと及川さんは最初に会ったときのようなおちゃらけた口調になる
「そっかー。そりゃー教えられないよね。その2年をあの天才飛雄はいとも簡単にやってのけちゃうもんねー」
「え?いや、なんてか、これやるとあいつの可能性?みたいなの潰しちゃう気がして。だから教えられないですよ」
俺は力なく笑った
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