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狂おしい少年。
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「梓、帰ろう」
声のトーンは変わらない。
けれど、さっきよりも明らかに鋭く、重い声。
それは、梓を金縛りのように縛るには十分すぎる。
梓は、浅く息をしながら、明らかにさっきより鼓動を早め、身動きを取る事もなく、悪さをした子供の様に、気まずそうに目の前にいる叔父を見据える。
「あの、差し出がましいとは思いますが、俺、梓…君を預かっております。和泉浩太といいます。どうか、もう少し、彼が落ち着くまでこちらで面倒を見させてはもらえませんか?」
事情は分からない。が、隣で好きな子が震えていたら放っておけないのが男ってもんだろ。
一歩、さりげなく梓をかばうように前に出る。
すると、男は動揺する事もなく、ただ、チラッと周りを見ると、困った様な、本当に、いい人そうな笑みを浮かべて、場所を変えましょう。と、言った。
駅から少し歩いたところにある、落ち着いた雰囲気のカフェに入る。
俺と梓の向かいの席に、叔父は腰を下ろした。
やはり、なかなかの男前だ。
優しそうで、整った顔。
髪をしっかりとセットしているからか、凄く仕事ができそうな感じがする。
ふと、あのアパートを思い出して、この人があそこで暮らしているなんて想像できないと思った。
男は、頼んだコーヒーが運ばれてくると、一口口に含んでから本題に入った。
「梓、出張から帰ったら君が家からいなくなっていて驚いたよ。何かあったらどうしようか不安で不安で、眠れない夜が続いた」
「ご、ごめ…なさ…」
消え入りそうな声でそう返す梓は、俯き気味に目の前に置かれているホットココアのカップを見つめていた。
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