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アラセイトウ
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「へぇー。じゃあ、週末浩太さんとデートなんだ?」
「へへっ。そう」
翌日、会って早々に謙太郎に昨晩の浩太さんとのやりとりを話した。
講義が始まるまでにと自動販売機で謙太郎はコーヒーを買って、僕に振り返った。
僕は照れてはにかみながらもつい昨日のことを思い出しながらキョロキョロと浩太さんを探していた。
「よかったじゃん」
心の底からそう思っていると言わんばかりの笑顔でそう言われて、力強く頷いた。
「謙太郎は?」
すると、謙太郎は少しうつむき気味に目を逸らし、今までに見たこともない思い悩んだ顔を見せた。
いつもニコニコしてて元気な謙太郎なのに、一体どうしたんだろう?
「謙太郎?…聞いてる?」
「えっ!?」
考え事をしていたのか、こっちがびっくりしてしまうほどの声をあげて彼は僕を見た。
ごめん、と、笑う謙太郎に、とてつもなくさみしい気持ちが溢れでる。
「だから、謙太郎には、好きな人、とか…いない、の…?」
そう、改めて問いかける。
「僕、謙太郎が聞いてくれるから、楽しくて、嬉しくて…いっぱい言うけど…謙太郎、にも、もし…大好きな人、居るならお話して、欲しいな…」
人差し指と人差し指をツンツンと合わせて、精一杯の勇気を出して自分の気持ちを言葉に出す。
「好きな人、居るよ」
謙太郎は遠くを見つめながら、ポツリと返した。
その言葉に、ワクワクした気持ちが止まらず謙太郎を見る。
だが、謙太郎は僕と違って、幸せではないい恋をしているらしい。
思いつめたような、さみしそうな顔をする。
僕にも何か力になってあげることはできないだろうか…。
「梓とは、真逆の人」
「え…?」
「何を考えてるのか分からなくて、何かを背負ってきたような悲しい目をするんだ」
「……」
「俺は、あの人の笑った顔が見たいだけなのに、あの人に歩み寄って触れたら、壊れそうなんだ。それが、怖くて…」
「謙太郎の、好きな人、人…でしょ?」
僕は、そんな時、壊れそうな時、浩太さんのことでいっぱいだった。
浩太さんに会いたくて、会いたくて。
今すぐにでも抱きしめて欲しかった。
浩太さんの腕の中はとても優しくて、安心した。
ふと、あることを思い出した。
あの時、僕を助けに来てくれた時、浩太さんの手は、少し震えていたのかもしれない。
でも何より僕は、掴まれた腕から氷が溶けるように安心したのだ。
「え…?」
不思議そうに返す謙太郎に続けて言葉を紡ぐ。
「に、人間で、しょ…?そしたら、分からな、い…はず、ないよ…。壊れない…から、壊れないよ、うに…抱きしめて、包んで、あげれば…いいんじゃ、ない…かな…?」
抱きしめて、包んで…。
絶対に、愛で溢れた腕の中で、人は壊れたりなんかしないから。
「………」
謙太郎は、何を思っているのか、何も言葉がない。
何か悪いことを言ってしまったのかとあたふたする。
「あっ!えっ、えっと…その、だから、何か…あれ?…うう…」
「…はは、そうだな。そう、すればいいのか…。俺、馬鹿だし、それくらい単純な方が合ってるや」
すると、元気よく笑ってそう言った。
何時ものような明るい笑顔で。
「謙太郎…?」
「ありがとう、梓。俺、頑張るから」
「…う、うんっ!頑張って!」
よく分からないけど、謙太郎が元気になれて良かった…。
僕も自然と、笑みがこぼれた。
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