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ヒナギク
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「梓…?」
謙太郎は、2人がかりで押さえつけられ、必死に僕の元に行こうともがいていた。
僕はたった一人でさえも振り払うことができずにいる。
掴まれた腕が痛い。
気持ち悪い。
必死に抵抗しているのに、ビクともしない。
逃げられない…。
すると、何か様子が違うと、謙太郎は訝しげに梓の名前を呼んだ。
だが、梓にはもうそれさえも耳に入らない。
突然の出来事と、腕を強く掴まれた恐怖で梓の頭はパニックだった。
記憶が、蘇ってくる…。
嫌…。
離して…。
お願い…。
痛い…。
嫌…。
嫌だ…。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ‼︎
嫌だ、離して、離して離して…っ。
「い、…や…、は、はっ、離っ、や…」
「…お、おい、梓…?」
謙太郎は突然のことに唖然として、僕らを取り囲む男達は焦り、そんな状況に、少しずつ、周りのお客さんも気づき始めて、遠巻きに僕らを眺める。
「何だよこいつ」
「や、ヤバくね?人、集まって来たし」
「い、行こうぜ」
息が、出来ない…。
「はっ、はっ…はあ、はっ、う…た、助けて、助け…こう、た…さ…浩太さん…たす…」
僕は立っていられなくなりその場にしゃがみ込むと、謙太郎に支えられた。
ガクガクと震えながら、顔は血の気が引いたように白い。
謙太郎の腕にしがみつきながら、ままならない呼吸を繰り返す。
息ができなくて、苦しくて、わけが分からなくて、さみしくて、怖くて、涙が出て、言葉にならなくて…。
浩太さん…。
ただ、会いたい…。
助けて…。
浩太さん…怖いよ…。
浩太さん…。
謙太郎は慌てながらも立ち上がり、周りの人に大丈夫と言葉をかけながら、僕を一目の少ない奥の方にあるトイレの前のベンチに座らせると携帯電話を取り出し何処かに電話をかけはじめた。
「あ、こ、浩太さん!?あの、あの!梓が…っ!」
そんな声を遠くに聞きながら酸素が足りなくて朦朧とした意識の中で、呪文のように浩太さんの名前を呼び続けた。
浩太さん…。
浩太さん…。
助けて…。
怖い…。
怖い…。
怖い…。
掴まれた腕がまだ痛い。
もう、もう終わったのに…。
もう、終わったことなのに…。
ーー梓、言うことを聞きなさい。
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