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温かい家
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「お邪魔します。」
浅原の家は高級住宅街を抜けてすぐそばの家だった。
豪邸というほとではないが、お洒落感を重視した家だ。
なんとも浅原に合わない可愛らしい家が少し可笑しかった。
「ん。まだ家に誰もいないから。」
「分かった。ケーキだけ冷蔵庫に入れてもらえるか?」
「うん。…じゃあ適当に座ってて」
俺は近くにあったツートンソファの端側に腰をかけ、部屋を少し見渡した。
久しぶりに輝馬以外の奴の家に入ったな…
なんというか、俺とか輝馬とは違う雰囲気を持つ家だな…何かは分からないけど、俺達とは違う。
……。
「よかったらどうぞ。…うち皆コーヒー飲めないなら甘いのしかないけど飲める?」
そう出されたのはココア。小さな花が散りばめてあるティーカップもまた可愛らしい。
「…別に甘いものも大丈夫だ。…ありがとう」
「う、うん」
甘いものはあまり口にしない。
家にはコーヒーのティーパックや、豆しかない。
というのもあいつの客達に出す飲み物はコーヒーだからだ。甘いのが好きな客には砂糖などを出すから問題はない。
ココアなんて家で飲んだことはあるのだろうか…。
ココアを一口口にするとふわっと甘さが口に広がった。
…懐かしい…?
「五條くん!!…やっぱ聞かせてほしい…五條くんと真桜の関係。ちゃんと聞きたい…。」
いつの間にか向かいの席に座っていた浅原が
体を前乗りにして、俺に言った。
無理だよね…と呟いて体を楽にさせる浅原は俺が話してくれるわけがないと思っているのだろう。
…ならなんのために呼んだのだ。
俺は考えた。
こんなに簡単に教えていいのか。
輝馬にも言ったこともない話をしていいのか。
きっと浅原に言ったなんて伝えたら相当ガッカリするのだろう。まだ出会ってしばらくしかしてない浅原に話をしたら色々と起こってしまうのかもしれない。
まだ俺達は信頼というものがない…。
それでも…いいのか…?
「…浅原がもう察している通り俺と真桜は双子の兄弟だ。俺が兄。真桜が弟。…もうすでに離婚はしているけど、双子ってことは変わりない。でも縁は切れている。…今はまだそれしか言えない。」
「そっか…。ということは離婚したのは小学生の途中?…あの真桜が転校しちゃった時期…、」
「俺達家族が離婚したのは小学に入学する前だ。離れたのも同じぐらいだから、小学校途中の転校については俺は知らない。」
「あ…そうなんだ。ずっとそうかと思ってた。…まだ色々分からないことばかりだ。」
「…。浅原にはまだ話すことでもない。いくら真桜と仲良かったとはいえ、俺と浅原には信頼がない。…それに、真桜が浅原にも話さなかったなら尚更言えない。」
「分かった…」
今日はやけに大人しくしているけど…前はもうちょっと真桜に関して強がっていたのに。
それより、なんで真桜は浅原に話さなかったのか?
離婚したと話すのが恥ずかしかったから?
俺が仲良い輝馬にこそ言えないみたいに?
…?少しそこは疑問だ。
…真桜は今何を思っているのだろう。
家族に関して何を感じてるのだろう。
もうあの時みたいに俺達は小さい子供じゃない。
物事ははっきりと考えられる体になっている。
…俺は…。
沈黙の間には何もなくて、
俺も浅原も沈黙に何も感じていなかった。
それだけお互い何かを考えていたのだろう。
時計の針が規則正しく時を刻んでいく。
………
「たっだいま〜!!雫〜帰ったわよ〜!」
玄関の扉が開く音がしたと思った瞬間に誰かの声が聴こえた。
すると浅原が玄関に向かって走り出した。
…?
「ちょっ…まま…っお母さん!うるさい!」
「なによ〜いきなり〜。今日の夕ご飯はシチューよ雫の好きな。…って、この靴は誰のかしら??…まさか!」
話はよく聞こえないけど、家族かなぁとそのまま待機しているとまた誰かが走り出すような音がして、どんどん近づいてくる。
…??
「やだ〜!!雫のお友達?…あらやだえらくイケメンさんね!!…初めまして雫の母です。」
ロングの茶髪を綺麗に巻いていて、派手なようだけど落ち着いた綺麗な女性が立っていた。
…浅原の母親…。
「初めまして。浅原くんの同級の五條成桜です。今晩はお世話になります。」
ソファから立ち上がって深々と頭を下げると、頭を捕まれ上にあげられる。
…???
「そんなお辞儀いらないから〜!!今夜は泊まっていくのね!!!!うふふ〜いっぱいお世話するわ!!」
はぁとため息をつく浅原に助けを求めようとするけど求められそうにもなかった。
…俺…どうなるんだ…?
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