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「…大丈夫ですか?」
どう見ても大丈夫そうじゃない相手にそう言うと、その人はニコリと笑って頷いた。
さっきまでの違和感や恐怖は既にもう消えていた。
「ごめんね、夕日が綺麗で。」
「…見とれてるような顔には見えませんでしたよ。」
「あはは。夕日は沈んでいくから。おかしな話だよね、地球が回ってるだとかなんとか言うけど同じものが何度も現れて消えるんだ。
俺達はこんなちっぽけな場所にいて手を伸ばしたって走りよったって届かない。…届いたところで触れる前に消えて無くなるからね。」
急にそう言うとまた夕日を見つめては悲しそうな顔をする。
昼とはまるで別人みたいだ。
それは、きっと"作家藍川"の顔で俺とは違う何かが見えているんだと思う。
ただの夕日でさえも、こんなに精神を動かされるような。
「…ごめんね小波くん、気持ち悪いね。」
「いえ。…すごく素敵です。俺、昔から藍川さんの発想というか…捉え方がすごく好きで。」
「ふふ…そんなふうに言われるの初めてだなぁ。」
「え?評価されたからこれだけ有名になってるんじゃ…」
「誰だって人と違うものを囲いこんで晒すんだよ。俺だってきっとそう。…聞かれて答えたところであんまりいい反応は貰えないんだ。」
寂しそうな横顔に、見えない涙が写ったような気がした。
メディアに取り上げられる度笑顔で写っていた藍川さんは心の中でどんな風に思っていたんだろう。
理解されないことに、人とは違うことにどこか苦しんでいたのかもしれない。
それでも俺は…
「俺は、…っ俺は、あなたの書く話が好きで短い文も長編の小説も…ふとインタビューの中で言うような事も…!考えてること、全部が好きなんです。」
「…ぇ、…?」
「だから!あなたが…全く発表をしなくなった二年前から…俺は、悲しくて寂しくて。あなたの何かを知りたくて、そのためにこの仕事に就いたんです。 気持ち悪くなんてない、俺はあなたを…」
もっと
もっと
俺の大好きな物を生み出すあなたのことを
「あなたを、知りたい。」
意味がわからないくらいに熱くなっていた。
真っ直ぐに藍川さんの目を見つめる。
あ、やってしまった。
と思った時には少し遅かった。
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