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帰ってきた藍川さんの手には100円ショップの子供用の作文用紙と鉛筆。
…まさか、いつもこれで執筆してるのか?
「さて。」
「…まさか本当に本を書くんですか?」
「え?」
ぽかんとした藍川さんが首をかしげた。
まるで"なんのこと?"と言いたそうな顔だ。
今机の上には紙と鉛筆があってそれを天才作家が握っている。
何もかも条件は揃っているはずなのに。
「え…?」
「残念だけど、俺は今本は書けないよ。お話は作れるけどね。」
「イマイチ理解出来てないんですけど…」
「さぁ始めるよ。…あるところに、藍川さんと小波くんがいました。」
「はい…??」
鉛筆で文字が並べられていく。
それはまるで幼稚園児が考えるような、そんな話。
藍川さんはいつもお昼までおやすみします。
その間、小波くんはいつも側で本を読んでいます。
すやすや すやすや
お昼すぎ 目覚めた藍川さんと小波くんは5時まで仲良くお話して過ごします。
「めでたしめでたし…。完成したよ。」
「あの、藍川さん…?」
「どうかな。最新作だよ。」
鉛筆を置くと藍川さんはどこか儚い顔で俺を見た。
藍川さんの最新作はまるで子供が思いつきで作ったような、なんの意味もない物語だった。
…いや。
むしろこれは日記の方が近いかもしれない。
「小波くん。きみは俺の書く話が好きって言ってくれたけど…もし、名前を伏せていても気付いてくれる?…この話の名前だけを変えて出したってきみはきっと好きになってはくれないよ。」
「…それは、……」
いじわるな話だ。
俺はきっと今、この人に試されている。
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