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外にいるのは危険だ。
藍川さんを支え、なんとか中まで連れては玄関へ座らせる。
膝を抱えて丸くなったまま俯く藍川さん。
何も言わない。
「…怪我、ないですか?」
「………俺は何も無いよ。」
知らないくらいに低い声。
生気がないみたいな、そんな声。
あの人が誰だったのか、何の話をしていたのか。
藍川さんから聞かなければ俺は一生知る手段は無いだろう。
けれど、こんな状態のこの人に何かを問いただす勇気なんてない。
しばらく冷たい空気の中で藍川さんを見つめていた。
時々、ビクリと体を揺らしては怯えたように足を強く抱きしめる。
そんな時だった。
「ひ、っ……」
「…藍川さん?」
一際大きく体が揺れると、両手を口に当て息苦しそうにもがき始めた。
何が起こったのかわからないまま顔を覗き込む。
真っ青な顔のまま目を見開き苦しそうにする姿はいつもの姿とはかけ離れている。
「っひ、…っ…ぅ、っ…は、っ……!」
「……息、…?」
何かがおかしい。
慌てて藍川さんの手を口から引き剥がして代わりに俺の手を当てる。
息が吐けていない。
強いショックや恐怖から起こる過呼吸だ。
この人は今、必死に生きるために助けを求めている。
苦しそうな声はきっと、呼吸が上手くできない事からだろう。
目からボタボタと涙が落ちていく。
「息、吐いてください…っ…大丈夫、大丈夫です。」
「は、ッ……ぃ、っひ、…っ、ヒっ…、!」
「…息吐かないと死んじゃいます、落ち着いて。ゆっくり、ゆっくりでいいから。大丈夫だから。」
息が出来ないくらい。
苦しくて 辛い思い出があるんですね。
「すって、はいて。大丈夫、大丈夫だから。…もう怖い思いなんて刺せないから。」
「…っひ、っぅ……は、ぁ…っ…」
「そうその調子です。怖くない、怖くない。誰も怒ったりしません。…ね。」
言い聞かせるようにそう言い、何度も頭を撫でた。
何一つ守れなかった自分が情けなくて。
貴方をこうして見守ることしか出来ない。
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