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「憂くん、どうしたの?」
「…先生、トイレ…っトイレ、行かせて…ください、…」
「駄目だよ。憂くんは馬鹿だから他の子と同じように生きちゃダメだよね?」
「で、も……っ…」
「ほら。もっとお水飲んで。そしたら馬鹿でも少しは身長が伸びるからね。今年中に後7cm伸びないと。」
「……ゆる、し…て…っ…」
あ。
夢だ、これ。
「…お、起きたか。」
「…おはようございます。」
「おはよう。気分はどうだ?」
「元気です。水、飲ませてくれたんですか?」
「あぁ。唇割れてたから相当飲んでないんだろうなと思ってな。あと、原稿は読ませてもらった。文句はない、このまま発行へ回す。」
「ありがとうございます。」
水なんか飲ませてくれたお陰であんな古い夢を見たんだろうな。
いや、死ぬよりはもちろんましなんだけど。
目覚めた場所はリビングのソファで、隣で俺の書いた原稿を読んでいるのはあの子じゃなくて偉い人だった。
痛む体を無理やり起こしてぼーっとその人を見る。
名前…なんだっけ。
「藍川、お疲れのとこ悪いが仕事を伝えに来た。」
「はい。」
「明後日、会見だ。場所は後でメールする。その後は12日から朝の番組へレギュラー復帰、13日に雑誌の取材が2件、それから14日にうち主催のイベント。…15、16はテレビの撮影で17日はオフ、18が…」
「あの。多分五分後に忘れてるので大まかにお願いします。」
「でかい仕事は脚本が2件とCMが1件がすぐにある。後は映画化の依頼が来てるな。」
「わかりました。」
正直わかってない。
今までなんとかなってきたしこれからも何とかなるはず。
それからも偉い人の話を聞くふりをして相槌を打っていた。
とにかく明日は寝て、明後日は出かけなきゃいけないってことはわかった。
ひと段落ついたところでそろそろ今日はお開きにしよう、という話になる。
「いいか?飯は食え、あとは寝ろ。」
「わかりました。」
「あとは何かあるか?」
「うーん…あ、小波くんは元気ですか?」
「あぁ。」
「それならよかったです。」
それだけ確認出来たらもう、あとは思い残すこともない。
俺だって俺のまま生きてあの子はあの子のまま生きればいいんだから。
「なぁ。あいつの名前は覚えてるんだな。」
「忘れなかっただけですよ。」
何も 特別なことなんてないんだから。
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