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急に開いた扉の向こうはあまりにも眩しすぎて、俺にはよく見えなくて。
持っていた箸を落としてしばらくその光を見つめていた。
ねぇ、どうしてだろう。
俺の記憶にはないはずの誰かが俺の記憶を叩くんだ。
君に会いたい、と叫ぶんだ。
「おはよう、小波くん。」
そう呟いた言葉に疑問を持つより先に、何かがこちらに向かって近付いてきた。
コツコツと足音が響く。
不思議と何も怖くはなかった。
このまま死んでしまっても構わないような、そんな気がしていた。
「…藍川さん、藍川さん。」
「うん、な……に、…」
なに?と言い返す前に体を強く抱きしめられる。
腕の中にすっぽりと埋まったまま動けない。
懐かしい香りがした。
やさしい記憶が蘇ってくる。
小波くん
他の誰かじゃなくて、ずっと君がよかったんだ。
「…貴方が好きです、誰よりも、何よりも。永遠に、死ぬまで…ずっと、ずっと好きです。」
「痛いよ、…」
「お願いします、…もう…離れないでください、…っ…」
「…小波、くん……っ…」
潰れるくらいに抱きしめて。
このまま君に殺されたって構わない。
きっと、それが1番の幸せなんだとすら思った。
強い力に締め付けられたまま俺は彼の胸に顔を埋めた。
心臓の音が聞こえる。
君も、俺も 生きているんだね。
「…貴方がいない世界がこんなに窮屈で退屈だと思わなかったんです。貴方がいないと…前が何もかも…霞んで、見えなくて。」
「俺も、同じだよ。君がいないと…うまく歩けないんだ。もう手遅れだったみたいなんだ。」
何故だろう?
君がそばに居るはずなのに、歪んで前が見えないんだ。
何かが溢れて仕方ないんだ。
「貴方は俺が守ります、命に変えてでも守って見せます。…だからもう、あんな顔しないで下さい。」
「あんな顔……?」
「泣きそうな、壊れそうな顔。貴方にはいつも幸せなままでいて欲しいんです。」
「…俺が知らない俺の顔、君は知ってるんだ。ふふ…嬉しいなぁ。」
悲しくないのに涙が溢れてくる。
これはどんな感情なんだろう。
わからないけれど、一つだけ変わらずにわかることがあるんだ。
ねぇ。
君が好きだよ。
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